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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜(二百九十九) 

2022年12月20日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



「社長は何もおっしゃいません。よわったな、どうご説明したらいいか……。社員たちの気持ちなんです。なんというか、その……。そう! そうなんです、天下布武の旗印なんです。戦国の武将には、旗印がありますですね。たとえば、上杉謙信は『毘』の文字、武田信玄は『風林火山』といった具合の。太閤秀吉は、金のひょうたんとかですね。『うちの会社はこうだ!』という旗印を、みな欲しがっているんです。口の悪い業者間で、ハゲタカ富士商会と言われているんです。それが、みな、くやしいんです」「ハゲタカ? ハゲタカって、あの、死んだ動物の……」。眉間にしわを寄せて、聞き返した。たまりかねて、勝子が口をはさんだ。「勝利! いいかげんにしなさいよ! そんなの、やっかみでしょ! そんなことを、小夜子さんの耳に入れるなんて、どうかしてるわ」「いいえ。聞かせて、竹田。強引な商売をしていることは知ってるわ。あちこちの会社を倒産にまで追いこんだとも聞いてるし」「それは誤解です、小夜子奥さま。それじゃ、社長があまりに気の毒です」
 ぐっと拳に力を入れて、竹田が力説した。「たしかに、ある会社から荷を引きあげました。それがきっかけで、倒産に至ったことは事実です。でも、それだって、相手を思ってのことなんです。富士商会からすれば、そのまま放っておいて、取引を絞り込んでいけば良いんです。でもそれじゃ、少しの間だけなんです。結局は夜逃げするしかありません。ひどいことになってしまいます。従業員がかわいそうです。なにがしかの金を残しての倒産の方が、従業員にも少しだけでも金をわたすことができます。それにうちが引き上げた商品だって、売れ残りの商品ですから。すぐにはさばけなかったし。大変だったんです、ほんとに」
「勝利、いいかげんにしなさいって!」「勝子さん、最後まで聞きましょ。商売がきれいごとでは成り立たないことぐらい、あたしにも分かります。ねんねじゃないんだから。でも、ハゲタカというのは、どうして?」 わなわなと唇をふるわせている勝子を制して、小夜子が竹田を促す。じっとうつむいたままの竹田だった。にぎりしめた拳に、ぽとりぽとりと雫がかかった。「勝利。あんた、泣いてるの?」「みんな、くやしい思いをしてるんだ。姉さんには分からないよ、この気持ち。なにもかもが、うちの会社、富士商会のせいにされちゃうんだから。一度だけの取引で、現金引換えという約束での取引なのに」

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