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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜(二百九十二) 

2022年12月02日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



「遠いのね」「もうすぐですから、はい。病院に近いものですから、どうしても引越すわけにいかなくて、母が通うにはどうしても近い所でないと」 申し訳なさそうに、竹田の声が小さくなっていく。「なに言ってるの、そんなの当たり前でしょうに」。ぴしゃりと、小夜子の強い声が飛ぶ。「あ、あれ、姉です。姉が手をふってます」 やっと現れた援軍を誇示するように、竹田の晴れ晴れとした声が車中に響いた。「そんな大きな声を出さなくても。 お姉さん? あら、ほんとだわ。お姉さーん! お姉さーん! お姉さーん!」 車の窓から身を乗りだすようにして、小夜子も手をふぬった。「小夜子奥さま、危ないですから。あまり乗り出さないでください。怪我をされては、社長に叱られますし」
「小夜子さん、小夜子さん。あたしね、あたしね、こんなに元気になっちゃった。ほらね、ほらね、こうやってピョンピョンができるようになっちゃった。どうしよう、どうしよう。ね、ね、どうしたらいい?」と小夜子の肩をしっかりとつかんで、なんどもなんども飛びはねた。「いいわよ、いいわよ。一緒にピョンピョンしましょ。お姉さんと一緒にこんなことができるなんて、ほんと夢みたい」「おかげよ、小夜子さんのおかげ。ありがとう、ありがとう。いくら感謝しても感謝しきれないわ。小夜子さんが励ましてくれたから、あたし、あたし、ここまでこれ……」 両の目から溢れでる大粒の涙が、勝子の声をおしながしてしまった。「ちがうわ、ちがうわ。みんな、お姉さんのがんばりよ。あたしは、ほんの少しお手伝いしただから。母への孝行ができなかったあたしだけど、おかげで真似ごとをさせてもらえたんだもの。あたしこそ、感謝させてほしいわ」
「さ、もうこの辺にしましょ。無理をして、ぶり返したらいやだから。ね、こんど気候が良くなったら、デパート巡りしましょうよ。ね、お約束よ」 差し出された小夜子の小指に、勝子の小指がからまる。「指きりげんまん、ウソ吐いたら針千本飲ーます」 思いっきりの笑顔を見せる小夜子だが、勝子の指からどか熱を感じた。“だめだわ、まだ。こんなに熱があるのに外泊許可を出すなんて、どうかしてるわ医者も。確認してみなくちゃ、これは。確か、お母さんのときだって。良くなったって聞いたのよ。床上げも許されて、近付くことは許されなかったけど、顔色も良かったし。でも、でも、そのすぐ後に。いえ! 大丈夫よ。きちんと治療しているんだから、大丈夫よ。お母さんとはちがうんだから。武蔵が、大丈夫だって言ってくれたんだから” 小夜子の母とは比べるべくもないのだと思いいつも、一抹の不安が過ぎってしまう。

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