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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜(二百五十一) 

2022年06月29日 外部ブログ記事
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「変わっていないね、竹田嬢は」「そうだね、相変わらずの女王さま気取りだ。」 車座からはなれた場所で、ふたりの恩師がささやきあう。「でも、そんな彼女を、皆さん認めてらっしゃるんでしょ? 在学時から、特別待遇でしたものね」 遅れて来た女教師が話の輪にくわわった。「そう、そうなんですよ。どうもね、あの娘にかぎっては許してしまうんですよ。不思議と腹もたたないんですね」「同感です。某教師は『卒業したら求婚してみるかな。へなちょこ坊主の佐伯正三なんぞに渡してなるものか!』なんて、真顔で言ってましたから」
 じっと小夜子のはじけるような笑顔を見ながら「それにしても、美人になりましたねえ」と、付け加えることを忘れなかった。そして「あのとき、『おれんとこに来るか?』って、こなをかけときゃ……。いや、冗談ですけどね」と、目を遠くへはせるようにつぶやいた。「あらあら、先生。それって、案外、あなたの本音じゃないんですか。金子先生が、ふられましたって泣いてましたよ」「そうなんですか?」。いつの間にか周りを取り囲んでいた、かつての教え子たちに問い詰められて、「ちがうよ、ちがいますよって。金子先生とはなにもないですし。ひとがわるいな、あなたも」と、大仰に手をふって否定した。
「タケゾーがね、GHQの将校さんたちのガーデンパーティに、あたくしをどうしても連れて行きたいって言うの。ちょっとしたお祝いごとなんかで、お互いのおうちに伺うっていう、お呼ばれってあるでしょ。ご近所つきあいって、大事じゃない? こちらでも」。見知らぬ土地での風習だわねとばかりに、まるで小夜子とは別世界でのできごとだと言わんばかりだった。「あたしたちはね、お休みの日に呼ばれるの。お庭でね、お食事しながら談笑することを、ガーデンパーティって言うの。お肉やらお魚やらお野菜をね、そのお庭で焼くの」。身振り手振りをまじえて話すのだが、誰ひとりとしてその光景を思い浮かべることができない。
「庭って、外ですか?」と、けげんな表情を見せる。「おうちが小さいんですか?」と、小馬鹿にしたように声を上げる者もいた。キッとにらみつけた小夜子が、あなたには話してあげないとばかりに顔をそむけた。そしてくるりと体を反転させた。こちらを向いてくださったと拍手を受け、満面に笑みをたたえてつづけた。「そりゃもう、楽しいものよ。飲み物も、ジュースはもちろんのことお酒もね。お酒といっても、ビールとかウィスキーとか、外国のお酒なんだけど。シャンパンなんて、すっごくおいしいお酒もあったわ。シュワーって泡が立つの。そうね、サイダーのような感覚かしら」
 ちょっとした仕草――コンロの形を説明するために、立ち上がって両の手をつかって空間に立方体を作ってみせる――に、キャーキャーと大騒ぎをされる。ご機嫌になって、さらにまた大きく体をつかっての説明となる。「もうね、そのおうちのマダムにご挨拶したいって列を作るのよ。マダムというのは、奥さんのこと。信じられないでしょうけど、こちらとは違って女性をすごく大事にするの。でも……その日は……」

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