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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜(二百四十九) 

2022年06月23日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



「ごめんなさい、悪い口でした」と、消え入りそうな声が小夜子の耳に届いた。「あたくしこそ、声を荒げてしまったわね。まあね、周りの人から見れば、タケゾーに嫁ぐあたしは玉の輿でしょうね。でもね、タケゾーに拝み倒されての婚姻なのよ。とにかくあたくしは、アーシアと世界を旅することに決めていたから」「おかわいそうですわ、小夜子さま。アナスターシアさんがあんな亡くなり方をなさるなんて、思いもかけぬことだったでしょうから」「そうね、ほんとに。あたしが付いていてあげれば、きっと死ぬなんてことは……」 小夜子が目頭をそっと押さえると、その時を待っていたかのごとくに、取り囲んでいた娘たちすべてが、それぞれにハンカチで目を押さえた。
「終わったことよ、もう。くよくよとしていたら、アーシアが悲しむわ。そうそう、出会いでしたね。あたしは、キャバレーで煙草を売っていたのよ。女給さんじゃないの。酔いどれ客の相手なんて、してません! でもね、タケゾーは強引でね。梅子お姉さんに頼み込んで、お店のマネージャーまで巻き込んでのことなの。梅子お姉さんというのは、女給さんたちのまとめ役をしてみえるのよ。もう姉御肌の女性で、肝っ玉の据わった女傑なの。女のあたくしから見ても、ほんとにステキな女性なの。でね、マネージャーに頼まれてね、仕方なく話し相手になったの。初めは嫌な男だったんだけど。散々悪態を吐いてやったのよ。でも『面白い娘だ、気に入った!』なんて、言うの。何度目だったかしら、三度目、いえ四度目ぐらいかしら。根負けしちゃってね、一度だけのつもりで、お食事に付き合うことにしたの。部下の専務さんに言い付けて、マネージャーの許可を取ったのよ」
 目を爛々と光らせて、小夜子の次の言葉を待っている。男と女の生の話など、そうそう聞けるものではない。しかも、いかに小夜子が否定しようとも、玉の輿に乗った小夜子の話である。ひと言も聞き漏らすまいと、皆が皆、聞き耳を立てている。
「その時はね、お寿司を頂いたの。お寿司といっても、あたしたちが食べるお寿司とは、まるで違うの。皆さんも、夕べ、出たでしょ。ご飯の上に、お刺身が乗っかっていたもの。あれなの、あれ。もうとっても美味しくて。お店の大将がびっくりするほど、食べちゃったの。『食べっぷりがいいねえ』なんて、褒められて。それ以来、もうプレゼント攻勢。毎晩みたいにやってきて、ブローチやらペンダントやらをプレゼントしてくれるの。女給さんたちに羨ましがられて。ううん、どころか憎まれちゃって。大変だったわ、ホントに。でも、梅子お姉さんの計らいで、無事収まったけれど。タケゾーも、怒ってくれたし」

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