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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (二百四十一) 

2022年06月03日 外部ブログ記事
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「この男はじつになさけけない。軍隊時代、かわやのそうじばかりさせられていての。皆みな馬鹿にされていたのよ。大正生まれの、なんじゃく男よ」 この言葉は、一同に大きな衝撃をあたえた。軍隊の中において厠番になるということが、どれほどの屈辱感を与えられるか、みながみな、身にしみていたからである。しかし当の武蔵は、しれっとした顔付きで答えた。「あれは、いい経験でした。現在のわたしを、あの経験が作り上げてくれましたよ。厠というところはですね、人間の本性が現れるところです。本音が出るところです」
「なるほど、なるほどの。」「ほお、ほお。そういうもんですか」「わしらみたいな凡人には、とうてい分からんことがあるんですの」「ふん。地べたに這はつくばって、米つきバッタみたいにぺこぺこじゃろうが」 なおも茂作の侮蔑は続く。「いい加減にして! おめでたい席で話すことじゃないでしよ!」 とうとう小夜子が茂作に噛み付いた。
「ははは。茂作さん、ちいと飲み過ぎたかい? あんたは小夜子さんをよめに出すのがいやなんじやろうて。それこそ正三坊ちゃんが相手でも、気に入らんようじゃから」「ここでけの話ですがの、むこさん。会社というもんは、もうかるもんですかいの?」「バカタレが。会社じゃからもうかるんじゃねえ! むこさんじゃからもうけなさるんじゃ」「はは。まあ、そういうことでしようか」「ふん、まともなやり方はしとらんわ。手が後ろに……」「お爺ちゃん!」と、小夜子が茂作を叱った。
 茂作の了見とは裏腹に、武蔵の評判はすこぶるいい。それも当たり前のことで、大枚の寄付を村にしている。しかもこの披露宴には、村民のほぼ全員が招待されている。来ていないのは、現村長の息の掛かった一部の者だけだった。しかしそこにも、そして足を運べぬ病人にたいしては、自宅に料理を運ばせた。子供たちに対しても、チューインガムやらチョコレートやら、ついぞ見たことのない菓子類が配られた。子供たちの目は爛々と輝き、あるものは口いっぱいに頬張り、あるものはペロリペロリと舐め、あるものはしみじみと見つめている。「また届けるから、大丈夫!」 武蔵の声に、大歓声が上がった。

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