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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (二百三十五) 

2022年05月19日 外部ブログ記事
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「ちょっとやり過ぎか?」「出入り禁止なんてことにならんだろうな?」「新聞沙汰になりでもしたら、とんでもないぞ」「いやそこまでには、ならんだろうさ」「いやいや、客の一人が面白おかしく喋ったら……」 ひそひそと話し合うが、今夜の正三を制御することは難しいことだった。
「佐伯君、局長の立場を考えなくちゃね」 杉田の耳打ちに、やっとひとみの手を離した。正三の急所を突かれた。どんなに酩酊していても、源之助を忘れることはない。じっとひとみを見つめる虚ろな正三。力なく、離れ行くひとみに手を振りつづけた。「何を言ったんです? 課長。」「なに、大したことじゃ。佐伯君の急所を突付いただけさ。彼を黙らせる唯一をね」「何です、それは。後学のために教えてくださいな」「いやいや、こればかりはね。さあさあ、飲み直そう」
「そうおっしゃらずに。我々だって手に負えなくなった時の、対処法を知っておきたいんですが」 食い下がる山田だが、杉田は素知らぬ顔で興に入った。「薫ちゃ〜ん。薫ちゃんは、どこにも行かないよね〜」「は〜い! 行かないわよ、ターちゃんの傍に居るわよ〜。 ターちゃんも、浮気しちゃだめよ〜」 やたらと語尾を甘ったるく伸ばす様は、聞かされている身としては辛いものがある。
「わたしとしては、ありきたりの美人には飽きたんだ。良く言うだろ?『美人は三日で飽きて、不美人は三日で慣れる』って。さらには、『醜女の深情け』ともね」 しっかりと薫の肩を抱き寄せて、真底の思いを語ったかの如くに、満足げな表情の杉田。「安らげるんだよ、薫のそばだとね」“こんな痩せぎすのおばさんの、どこが良いんだよ” そんな思いを抱いていた面々だが、杉田の言葉に妙に納得させられている。
“確かに、美人相手だと気を使うかもな”“最近は、鼻っ柱の強い女が多いからな”“プライドの高い女は、確かに、ある意味疲れはする”“すぐに指名が入って、じっとしていない。けしからん!”“キョロキョロして、落ち着きがない” と思いはするが、それでも、“グラマーな美人がいい”が、本音ではあった。

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