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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (二百二十五) 

2022年04月28日 外部ブログ記事
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 杉田の先導で、きらびやかなネオンサインの下を歩いた。キョロキョロと辺りを見回す正三に、「坊ちゃん、まるでお上りさんですよ。恥ずかしいからやめてくださいよ」と、上本が正三の袖を引っ張った。「だって、初めていや二度目なんだぜ。ここが夜の銀座という所かい? いゃあ、凄いねえ。まったく別天地だ。日本復興のすさまじさを、確かに感じるね」上本の言などまるで意に介せずに、立ち止まってぐるりと見渡したりしている。
「坊ちゃん、坊ちゃん。ほら、あそこで婦女子が笑っていますよ。あれれ、手なんか振り出した。ひょっとして知り合いですか?」 小山の指差す先を見ると、正三たちに確かに手をふる女性がいる。「あれえ? 誰だあ、彼女は。手招きしてるじゃないか、行かなくちゃならんのかな」と、車の行き交う中に飛び出さんばかりに正三が動いた。
「おいおい、佐伯君。いかんよ、そいつは。今夜はぼくの店に行くんだろうに。もっとも、支払いは佐伯君に任せるんだから、強くは言わないけれども」と、杉田がこぼす。「いや、課長。そうじゃなくて、あそこの女性が手招きしてますので、行かなくちゃならんのかなと」 真顔で言う正三に呆れかえる杉田だったが、いまだに純朴さを少し残す正三がまぶしくも見える。「坊ちゃん。あれはですね、自分の店に呼び込もうとしているんです。指名客のいない女給が、カモを釣ろうとしているんです。小山、からかうのもいい加減にしろ。本気にしちゃってるぜ」
「仕事にゃ強い坊ちゃんも、女にはからきしか? そりゃそうと、あの女性とはどうなったんです? ほら、初恋の」 津田の話に、慌てて山田と坂井の二人が止めた。「その話はやめろ! 機嫌が悪くなっちまう」「終わったんだ、その女性とは。お前、聞いてないのか!」「性悪女だったんだよ、二股なんかかけたりする」
「小夜子さんのことか? あの人は、もう小夜子さんじゃない。ぼくの知る小夜子さんは、新しい女性だった。けれど今の小夜子さんは、まるで俗物だ。物欲に憑かれた、哀れな女性さ」
「なんだ、佐伯君。失恋をしたのかね? よし、あたしに任せなさい。伴侶は局長が見つけてくださるだろうから、都合の良い女を見つけてあげよう。キャバレーの女も、良いものだよ」「そりゃいい。課長、good ideaですよ」と、上本が得意の英語を披露した。とすかさず小山がからむ。「上よ! アイディイアと、イントネーションを強くしろよ。それにグッドはないぞ、ドは」

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