メニュー

最新の記事

一覧を見る>>

テーマ

カレンダー

月別

敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (百七十八) 

2021年12月23日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



「明日、昼前に迎えを寄越すから」
「ええ! 来てくれないの? 」。拗ねた表情を見せる小夜子で、恨めしげに武蔵を見る小夜子だ。
「分かった、分かった。俺が来る、多分大丈夫だろ」
「だめ! 多分なんて。絶対来て! じゃなきゃ、行かない!」。頬をぷーっと膨らませて、迫る。
「分かった、分かった。だったら、振り袖着てろ。お互いの、約束だ
「うーん、分かった」と、渋々といった表情を見せる小夜子だが、内心では“それも悪くないか”と、思えてきていた。

 夜半に降り出した雨だったが、朝にはすっかり上がっていた。
「プップー!」。閑静な住宅街に、車のクラクションが鳴り響く。
大通りから1本中に入った路地の中ほどに、武蔵の住む二階建てがある。
「もう建てたらどうです。いつまでも借家住まいでは、格好がつかんでしょう。
銀行からも勧められているでしょうが」。幾度となく五平が進言するが「独り者は借家で十分だ」と相手にしなかった。
しかし今、小夜子と居を一にしている今は「不動産屋に探させているから、もう少し待ってくれ」と、小夜子を喜ばせている。

「はあい! 」。バタバタと、小夜子が玄関に走ってきた。
「待ってろ、小夜子」。玄関の引き戸が引かれ、「おう。道がぬかれん出るからな、この板の上を歩けよ」と、靴を汚している武蔵だ。
“靴はな、男の顔だ。汚している奴は信用できん”と、汚れを極端に嫌がる武蔵だ。
その武蔵が、泥だらけにしている。飛び付きたい衝動に駆られる小夜子だった。
「さあ、着いたぞ。ちょっと待て。ここもぬかるんでるな。小夜子、おんぶしてやる」
「ええ! やめてよ。こんなことなら、振り袖なんか着るんじゃなかった」
「なに言ってる。可愛いぞ。ほら、来い」
 嬉し恥ずかし、の小夜子だった。中腰でお尻を突き出す武蔵。何とも微笑ましい光景が見られた。

「いいですか、社長。これは重大なことですからね。奥さまとして、皆に認めさせる儀式みたいなもねですから」
「分かった、分かった。で、どうすればいい? 」
「なに、簡単なことです。小夜子奥さまのとびっきりの笑顔を見せればいいんです。
あと、社長のベタ惚れぶりも。それと、振り袖姿を見せてやって下さい。それで、完璧です」
「それでって、五平。振り袖だって? 今さらそりゃないぞ」
「いいんですよ。可愛いけりゃ、なんでもいいんです。
小夜子奥さまの振り袖姿は、絶品です。誰が見ても可愛いですって。
とにかく可愛いく見せるのが、ミソなんです。
あの旅館の女将のように使用人を押さえ付けるか、使用人に盛り立てて行こうと思わせるか、どちらかなんです。
小夜子さんは家の中でじっとしてる人じゃない。もっとも、英会話の特技を生かせてもらわなくちゃいけませんが。
幸い道がぬかるんでます、靴を思いっきり汚して下さい。
それと、会社の前で小夜子奥さまを抱っこして下さい。
車から降りる時、ぬかるみですから不自然なことはありません。
照れることないでしょうが。そいつが、ベタ惚れの証左になるんですから。大丈夫ですって」

 膝を乗り出して、武蔵に講釈する五平。有無を言わせぬ力がこもっている。
「だけどなあ。小夜子の奴、嫌がらねえか? 」
「大丈夫! 」
「はしたない! って、ならねえか? 」
「大丈夫! 小夜子さんだから、大丈夫ですって。
正直、奥さまじゃありません。どう贔屓目に見ても、奥さまじゃない。
でも、いいんです。みんな、お姫さまだとあがめますから」

>>元の記事・続きはこちら(外部のサイトに移動します)





この記事はナビトモではコメントを受け付けておりません

PR







掲載されている画像

    もっと見る

上部へ