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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (百五十五) 

2021年11月02日 外部ブログ記事
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「今夜の寄り合いは、わし抜きかい? わしに聞かせたくないことでもあるのかい?」と、茂作が現れた。
 意地悪げに、ギロリと正左ヱ門を睨みつける。
「いや別に、そんなことは」
 「茂作。あんたは声をかけても、いっつも出て来んからよ」
「ほおじゃ、ほおじゃ」
「今夜はどういう風の吹き回しかい?」
「ふん。お邪魔だったかいの? わしは」
「茂作、いいかげんにせんか!」と、本家の繁蔵が怒鳴りつけた。
普段ならば縮こまる茂作だが、今は恐いもの知らずだ。
「本家じゃからて、そう怒鳴りなさんな。わしには聞かせとうない話が、佐伯ご本家からあったんじゃろ? 
おおかた、正三お坊ちゃんの嫁取りじゃろうが」

 どこで聞いたのかと、顔色を変える正左ヱ門だ。ここにいる全てが、今の今まで知らずにいたのだ。
佐伯本家の中でも、使用人は勿論のこと家人すら知らない。母親のタカだけだ。
「ふん。腑に落ちませんかな? わしが知っておるのが、不思議ですかな?」
「ま、まさか!タ、タカが?」
「いや、いや。タカさまではありませんぞ。ご本人です、跡取りの正三お坊ちゃんですよ」
 これには皆唖然とした。
“小夜子が言い寄っている。分もわきまえぬ不埒なおなごじゃ!”と、悪評紛々だった。
それが、どうも雲行きが怪しい。誰も口に出さないが、正三が言い寄っているのではと思い始めた。
「茂、茂作さん。その件については、あとでゆっくりと」
 顔色を変えて、正左ヱ門が茂作に頼み込む。

「いんや。今夜この場ではっきりさせる。小夜子は正三の嫁にはやらん。
理由は、今は言わん。ま、皆のど肝を抜くことだけは間違いない」
 茂作のこの言葉が、先ずはど肝を抜いた。
「正三坊ちゃんを袖にするとは、もさくは気でも狂うたか?」
「やっぱぁ、誰ぞの妾になったちゅうのはほんとか?」
「うむ。そうとしか考えられんぞ」

「茂作、お前、気が狂うたか! 佐伯さまに、なんちゅう言い草じや。
謝れ、早う謝れ。わしも一緒にお許しを願うけん」
 慌てて茂作を叱り付けるが、茂作は胸を張っての威張り顔だ。
「いや、茂作さん。竹田のご本家さん。それは、結構なお申し出です。
当方から話を持ち掛けた覚えはありませんが、了解致しました」
 居住まいを正した正左ヱ門が、キッと茂作を睨みつけた。茂作の頭の中には、キラキラと輝く小夜子が居る。

“ふん! 正三ごときに小夜子は勿体ないわ”
 佐伯の本家に平身低頭の繁蔵を見下す茂作。
その姿に誰もが呆れつつも、心底では感心した。意気揚揚と引き上げる茂作。
その脳裏には、アナスターシアと姉妹になった小夜子が居た。
そしてその二人にかしずかれる己を、思い描いていた。

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