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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜(百三十八) 

2021年09月22日 外部ブログ記事
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「ああ、美味しかったぁ。さてと、最後のお菓子は、…やっぱり冷たくて甘いものよね。
あれ、何て名前だったっけ?」
「アイスクリームのことか?」
「そうそう、それそれ。頼んでくれる?」
 武蔵が手を挙げると、すぐさまウェイターが飛んできた。
「こちらのお姫さまが、アイスクリームをご所望だ。頼むよ」
 承知しましたと、深々と礼をして下がる。

「ふうん。お父さんって、どこに行っても、上客なんだね。他のお客さんと、扱いが違うみたい」
「まあな。俺は紳士だからな。敵に対しては容赦しないが、味方にはとことん応援する」
「それって、お父さん。あたしに、言ってるの? 恩知らずって、思ってるんでしょ? 
あたしだって、いろいろ考えてるから。お父さんには、キチンとお世話になった分、お返しをするつもりだから」
 ポッと頬を染める小夜子だが、武蔵には酔いが回ったせいと映った。

“小夜子の奴、どこまで本気なんだ? 夢物語りに聞こえはするが、ひょっとしてひょっとするか? 
どうなんだ、武蔵。手ごめにしてでも、ものにするか。
それとも最後まで、小夜子の言う足長おじさんでいるか?”
 目を閉じて考え込む武蔵を、小夜子はスプーンを止めて見やった。
“ごめんね、お父さん。お父さんのこと、好きよ。でもそれは、感謝の意味なの。でも……。
アーシアに会っていなかったら、ひょっとしたら。お嫁さんになったかも? 
ううん、だめだめ! やっぱり、正三さん。正三さんなの。
先にお父さんに会ってたら、また違ってたかもね”
 
「なに、考えてるの?」
 黙りこくる武蔵に、一抹の不安を覚える小夜子だ。
“あたしを、あげる。今までのお礼に、あたしの処女をあげる。
いいでしょ? それで”。
喉まで出かかる言葉を、ぐっと甘いアイスクリームと共に飲み込んだ。
「ああ、すまんすまん。ちょっと、な」と、席を立った。
「どこ行くの?」。慌てて、小夜子も立ち上がろうとする。

「違う、違う。小夜子を置いて、どこにもいかんよ。
小夜子、知ってるか? 上機嫌のアメリカさんはな、こう言うんだ。
大きく手を広げて『ネイチャーコールミー』ってな」
「自然が私を呼んでる? なに、それ」。小夜子が頭を傾げながら、問い掛ける。
「おっ、訳せるじゃないか。しかし惜しい。もうひとひねりできれば、完璧なんだがな」
「ひとひねりって?」

「ああ、いかんいかん。洩れそうだ」
「洩れそうって、いゃあねえ。早く行って来て! えっ? ご不浄に行くってことなの?」
「大正解だ。小夜子は、勘が良いなあ。
大抵の女は、まだ意味が分からんものだが。
しっかりと勉強しているみたいだな。これなら、将校相手でも会話できるかもな」

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