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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜(百三十七) 

2021年09月21日 外部ブログ記事
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「ジャズ? 小夜子はジャズが好きなのか?」
「知らなかった? 英語の勉強もだけど、ジャズを聞きたいというのもあるの」
思いも寄らぬ返答に、普段の小夜子からは感じられぬその嗜好に驚きを隠せなかった。
小夜子のすべてを知りぬいたつもりの武蔵だったが、アナスターシアとのことといいジャズ音楽への入れ込みようといい、底の知れぬ女だと嬉しくなる武蔵だった。
「どうして早く言わないんだ。連れてってやろうか、本場のジャズが聞けるところに。日本人は聞けないぞ」
「ほんと、ほんと、ほんと? 約束だよ、絶対だよ」

 身を乗り出して、武蔵の前にナイフを振り回す。
「おいおい、危ないじゃないか」
「ごめんなさい。で、いつ? 明日? 明後日?」
「いや、そんなに早くは無理だ。二、三ヶ月は先だろうさ。先月に来たばかりだからなあ、慰問団が。
そう、しょげ返るな。日本人のバンドが、週末毎に演奏してる所もあるから。
アメリカの将兵さん相手にな。そこに潜り込ませてやるよ」 

 顔を輝かせて、そして大きく目を見開いて、武蔵に何度も念を押す。
大きく何度も頷きながら、約束よと、指切りげんまんをさせられた。
そんな子供じみたことをせがむ小夜子にジャズ音楽の嗜好があることが、どうしても腑に落ちない気持ちがつきまとった。
「一緒に、来てくれないの? 一人じゃ、怖いわ」
「俺は、ちょっとな。代わりに、誰か付けてやるよ。
そうだ! 小夜子。近い内に、会社に来い。
みんなに会わせておこう。顔つなぎをしておくのも、いいだろう」

「でも、あたし……。アーシアの都合次第では、来年にでも……」
「その時は、その時だ。その前に、小夜子。会話の方は大丈夫か?」
「うーん、多分ね。学校では何とか話してるけど、どうなんだろ、実際は」
「いいさ、いいさ。パーティではアメリカ人ばかりだ。試験を受けるつもりで話をしてみろ」
「試験?」
「ああ、アメリカさんのパーティだよ。そこで分かるだろう。小夜子の英語が、どの程度通じるか」
「うわあ、なんだか怖いわ。でも、会話してみようかな?」

「どうだ?俺の嫁さんになると、こんなに良いことがいっぱいだぞ。
その、えーと、アーシアとかいうモデルより良いだろうが。」
「ダメエ! アーシアって呼んで良いのは、あたしだけなの。日本では、ね。世界でも、数人しかいないのよ」
「そうか、そいつは悪かった」
「良いわ、許してあげる。知らなかったんだから。でね、アーシアってね……」

 途端に目を輝かせて、アーシアとの交流を話し始めた。
しかし武蔵には、まるで話が見えない。
“アーシアとか言うモデルと暮らす。それは分かったとしょう。
それじゃ正三は、なんなんだ? なんで結婚なんだ? 正三は承諾してるのか? 
まさか付いて行くわけでもあるまいし。それとも小夜子の勝手な思い込みか?”。
どう考えても理屈が付かない、正三の気持ちが理解できない。
“正三くんは了解してるのか?”。口に出して聞いてみたいと思うが、止めた。
不機嫌になることは、目に見えている。

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