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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜(百三十四) 

2021年09月14日 外部ブログ記事
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 小夜子は一人、靴売り場の入り口で、所在なげに立っている。
正三と訪れた折には、1階からすぐにエレベーターに乗り、催事場のある5階へと向かった。
そこで坂田という係員に見咎められて、言い争いを起こしてしまった。
そしてマッケンジーとうデザイナーの目に留まり、そしてそして運命の女性とでも言うべきアナスターシアとの結びつきが出来た。
 小夜子にとって聖地とも言えるその場所に今日は来た。ひとりで来た。
そこかしこで、ヒソヒソ話が始まった。
場にそぐわぬ小娘に、視線が強い。相手をしている店員たちもまた「そうでございますね」と相づちを打っている。
その中の独りがツンケンとした朽ちようで「何かご用でしょうか、お嬢さま」と、棘のある口調で声をかけた。
“あんたなんかの来る場所じゃないわよ”。そんな声が聞こえてきそうな雰囲気だった。

「小夜子さま、おまたせ致しました」
 高井が、満面に笑みを浮かべてやってくる。
一瞬、フロアが凍り付いた。“小娘如きが、来る場所じゃないわよ!”と、蔑視の視線を浴びせていた娘に、外商部の課長が深々と頭を下げている。
「わざわざお出で頂きまして、ありがとうございます。
ご連絡頂ければ、こちらからお伺い致しましたのに」
「武蔵が急に、出かけるなんて言いだしたんです。
まさかお買い物だなんておもってもいなかったんです。この後の食事につられて、なんです」

 普段の小夜子らしからぬ弁解じみた言葉が、次から次にと口をついて出る。
高井とは二度ほど自宅で会っただけなのだが、柔らかい口調と小夜子を褒め称える言葉の羅列で、すっかり小夜子のお気に入りとなっていた。
が、この場所での高井は、あの坂田を思い起こさせてしまう。
横柄な態度などは一切とらぬ高井なのだが、小夜子の歩が気後れしてしまっていた。
「そうですか、お羨しいです限りです。ほんとに仲睦ましいことで。
会社にお伺いしましても、小夜子さまのお話の折は、ほんとに嬉しそうにされてます。
ここだけのお話ですが、ご機嫌ななめの折は、小夜子さまのお話をさせて頂きます。そ
うしますと、すぐにご機嫌が直られまして……」

 今にもあくびが出そうな、小夜子。社交辞令に慣れない小夜子には、焦れてくる話だった。
「そうですか」と、笑みをたたえつつも目が笑っていない。
そんな表情を見てとった高井は、この場での接遇は自分では成り立たないと思い、すぐに後ろに控えていた女性に声をかけた。
「長々と失礼致しました。君、森田君。
小夜子さまのご相談にのってあげなさい、粗相の無いようにね。
この森田君はこの売り場の主任を勤めておりまして、きっとお役に立ちますです、はい」

「森田と申します。先ほどは失礼致しました」
 唖然としていた店員たちが我に返る中、慌てて森田が深く腰を曲げた。
「森田君、失礼って、何かあったのか!」
 顔を真っ青にして、怒鳴りつける。森田は体を縮こまらせる。
「大丈夫です、何もありませんから。ボーっと立ってたあたしが悪いんですから」

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