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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (百十四) 

2021年06月29日 外部ブログ記事
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 小夜子が立ち去ると同時に、梅子が武蔵の傍に陣取った。
そして珠子に対し、「珠子! 新しいボトルを持ってといで」と命じた。
「ボーイさーん!」。手を上げてボーイを呼ぶ珠子に対し、あんたが行くんだよ、男衆を呼ぶんじゃない!」と、珠子を立ち去らせた。

「社長! 少し甘すぎるんじゃないかい? あれじゃ、世の中をなめきってしまう。
贅沢に慣れきった女の末路は、そりゃあ悲惨だよ」
 梅子が真顔で、武蔵を嗜めた。
「いいんだよ、あれで。小夜子には、贅沢な女になってほしいのさ。
田舎じゃ貧乏神に付きまとわれた生活だったんだ。
ときどき卑屈な目を見せるんだよ。着飾った女がいると、腰が据わらんと言うか……。
だから贅沢な女が憧れの的になってるんだよ。
あれじゃいかん。贅沢をするって事がどんなものなのか、分からせてやりたいんだよ」

「あんたって、人は。本気なんだね、やっぱり。
単なる気まぐれじゃ、ないみたいだね。それじゃあもう、何も言わないけどさ」
 呆れ顔で、梅子は深くため息を吐いた。
「で? 珠子は、どうすんのさ。ご用済みにするのかい? その内に」
「珠子? なんで、別れなきゃいかんのだ。
あいつの体は、絶品だ。まだまだ、味わいたいぜ。
それにだ、今すぐって訳じゃない。年が明けてから、小夜子の両親の元に行くつもりだからな。
今、調べさせてるんだよ。小夜子の口ぶりじゃ、相当に困窮しているらしいからな。だから、」
「お待たせえ!」。 珠子が戻ったところで、話が途切れた。

 武蔵の真意を測りかねていた梅子だったが、これほどに武蔵が真剣に向き合っているとは、思いもかけぬことだった。
単なる遊びだとは考えてはいなかったものの、小夜子の身に武蔵の魔手が及ぶ段になった折りには、なんとしても立ち塞がるつもりでいた。
梅子の立場からすれば、一介の煙草売りに過ぎない小夜子だ。
然も小夜子には、折に触れて警告をしている。

「遊ばれたとしても、あたしには何もできないからね」。何度も告げている。
その都度小夜子は「そんなあ。梅子お姉さんの責任だなんて、あたしは思いませんから」と、ケタケタと笑っている。
こうまで言われては、遊び相手として武蔵にもてあそばれたとしても、それはそれで仕方のないことと思う。
しかしそれでも、いやだからこそ、梅子は小夜子の盾になるつもりでいた。
小夜子がそう考えてしまう女にしたのは自分なのだ、そう考えた。

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