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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 (光子の言い分:一) 

2021年05月25日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 あらあら、まあ。ずいぶんな言われようですこと。
でもまあ、それは、女の勲章とでも思うことにいたしましょうか。
けれども昔々の大昔ですのに、そんなにお気になりますの? 
ならば、わたくしのことですから、わたくし自身がおしゃべりしてもよろしいでしょうに。

確かに、わたくしという、光子という女を創り上げてくださいましたお方のことばでしたら、確かなことで間違いはないと思います。
でもでも、やはり殿方でいらっしゃいますから、女の細かなこと――こころのひだといったものはお分かりにならないでしょうから。
「嘘は吐かないように」ですか? それはもちろんですわ。
「自分をかばうな」ですか? そんなにお疑いなら、もしも嘘を言ったり自分に都合の良いことだけしか言わなかった折には、その旨仰ってくださいましな。

 それでは、わたくしからお話を。
 大阪と言いましても、市内ではなく郊外でございました。
道はでこぼこ道が多く、埃っぽさもありました。
雨などが降りました折には、もうぬかるみ状態でございます。
余ほどのことがない限りは出歩く者はおりませんわ。
ですので都合の良いこともありますわね。
意味深なことを、とお思いですか? 
そうでございますわね、なにかがあるかもしれませんわね。

道幅は、そうでございますね。荷車がすれ違える程度、そう申しましたらご想像がつきますでしょうか。
街中ほど広くはございません。
両側は田畑ばかりでございしまして、遠くにはなんというお山でしょうか、連なっておりました。
で、小さな川でございますが、三本が交わりすこし大きめの川となります。

その川端になりますが、その近くに三水閣という料理旅館がございます。
三本の水の通りがから付けられた名前だと聞いております。
ただ、もうひとつの隠された意味があるともお聞きしました。
「大きい声では言えないんだけどさ、三途の川、と言うことなの。女たちの、ね」。
哀しいお話だそうでございますよ。

 はいはい、申し訳ありません。
でも順を追ってお話をさせてくださいな。
ひとっ飛びにその三水閣にいきましては、面食らわれるお方がいらっしゃいますわ。
地名はご勘弁くださいな、その地区に住まわれているお方たちにご迷惑をおかけすることにもなりかねませんから。

三郎とは、汽車で移動中におかしな気持ちになったのは認めますです。
疑念が湧いたのも事実でございます。
ですが、だからといって別れようとは思いませんでした。
今思い返しますれば、正直の所、自暴自棄になっていたと思うのでございます。
それに、悪感情を抱く理由もございませんし。
どこぞの大学の嘱託講師とか申しておりましたが、事実は単なる遊び人でございました。

 権左衛門さんの親戚筋に当たるというのは、どうやら本当のようでございました。
と言いましても、遠縁にあたるものでして。
まあ、一種のたかりに来たというところだったようでございます。
どこで聞きつけましたのか、相当に悪い状態だということで、幾ばくかの遺産分けを期待してのことだったようで。

それに失敗したが為に、わたくしに狙いを変えて、と言うことでございました。
若女将という立場を考えますれば、貯金もあるだろうし旅館のお金をくすねることもできるだろうと、考えたようでございます。
わたくしと清二の夫婦仲が良くないことを知らぬ人はおりませんでしたし。
清子という愛娘を亡くしていることから、明水館内におけるわたくしの立場が微妙になっていることも、すぐに分かることでしたし。

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