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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜 (九十二) 

2021年04月01日 外部ブログ記事
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 はやし立てるように笑う五平に、
「調子に乗りすぎじゃねえか、五平さんよ。俺だってそれなりに自信はあるが、どうもあの女将は分かんねえや。
うまくあしらわれるような気もするんだなあ」。
弱気になっている武蔵に対し、「らしくもねえ。ドーンといってみたらどうです。
但し、今日はダメですよ。武さんのことだ、またすぐにでも来るんじゃないですか」
と、探りを入れる五平だった。
「女将と言えば、今度陶器を扱うことにしたから。
手始めに、ここに徳利を進呈することにした。夕べのやんちゃのお詫びの意味でもな」
「お詫びねえ。分かりました、分かりました。そういうことにしておきましょう。やっぱりだ」

「ところで、五平、さん 」
「気味が悪いなぁ。いつもどおりに、五平でお願いしますよ」
 にやつきながらの武蔵に、尻がムズムズする五平だ。
「俺に嫁さん云々と言うが、お前さんはどうなんでしょうねえ。確か、四十に近いんじゃないか? 」
「ええ、ええ。おかげさまで、もう七になってますよ」
「そうか、三十七才か。で、どうなんだ? 」
「なにがです? 」
「このやろう、しらばっくれて! 嫁さんだよ 」

「ああ、それですか。 あたしは、貰いませんよ。いや、貰っちゃいけないんで。
あんな稼業だったあたしです。とんでもないです。
それに、気が向いた時に好きな女を抱いてるんです。充分です」
「だったら、俺だっておんなじだ。なんで俺だけ、窮屈な思いをしなくちゃならねえんだ?」
「武さん。家庭ってのは、いいもんだ。それに、社会的にも大事だ。
あんたは社長だ。体裁が悪いです、いつまでも独り者じゃ」
 なるほどと納得する武蔵だった。確かに対外的な側面から考えても、いつまでもフラフラする状態ではまずい。
上場企業との取引先においても、その胡散臭さが邪魔をすることがある。

「しかし五平。いつまでも昔を引きずるもんじゃないぞ。
女衒をしてたからって、そこまで卑屈になることもなかろうに」
「いや、それはだめ、、 」
「まあ待てよ。納得ずくのことだろうが。だまくらかしてのことでもあるまいに」
「いや、それは……。でもねえ、娘たちの言い分を聞くと、、」
「玉ノ井だってことは、言ったんだろうが。まさか女中奉公だとは言ってないだろうが」
「そりゃまあ、そうですが。でも、女郎だとは、娘たちには言ってないんで」
「そんなものは、親が知ってりゃいいんだよ。大枚の支度金が渡されるんだ、覚悟の上さ。
なあ、こうしようや。俺が嫁さんを貰う時は、五平も貰え。一緒に式をあげよう。
いいか、決まりだ」
「武さん、ありがとう。俺みたいな半端者が、所帯なんぞ持ってもいいんですかねえ」
「当たり前だ! 俺の相棒なんだぜ」

“キャッ、キャッ”とはしゃぐ声が、二人の耳に入った。
「ああ、いたいた。社長! 探したわよ。みんながね、お土産買いたいから、早く出たいんですって」
「そうか、お土産を買いたいのか。分かった、分かった。お嬢さん方のご希望だ。専務、そういうこだから、頼むぞ」
「頼むぞ、って、社長。まさか……」
「やっぱりだめか?」
「冗談はやめて下さいよ。一緒に帰って下さいよ」
 二人の掛け合い漫才にも似たことばの応酬に、
「どうしたんですか? まさか、もう一泊なんて、だめですよ。
女将でしょ! 社長の目、なんだか嫌らしかった。
京子ちゃんの予感が当たってる。はい! 一緒に出ましょ」
と、武蔵の両の手を二人がかりでつかむと、さあさあと引っ張り始めた。
「五平! お前。俺の伴侶にって、言ってたじゃねえか」。
武蔵の救いを求める声に対して
「だめですな、社長がこっちに来そうだ。女将にしてやられそうだ。
あっちの方が、一枚も二枚も上手のようだ。諦めてくださいな」
と、五平が突き放すことばを出した。

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