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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜 (六十八) 

2021年02月04日 外部ブログ記事
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「幸恵さん。これからよろしくね」
 今までにも小夜子の笑顔を見ることはある幸恵だったが、今日のこの笑顔だけは初めてのものだった。
小夜子の口角が微妙な角度で上がっている。
同じ女性からしても妖艶さを感じるほどで、背がゾクリとする初めての感覚を味わった。
「あのお、それって、兄の……」
「お兄さんの、なあに?」

 幸恵としては「兄のお嫁さんになるということですか?」と聞きたかったが、ぴしゃりとやられそうで声が詰まった。
「ふふふ。正三さんのお嫁さんになるということ? ふふ、そうかもね」
「ええ! ほんとですか? お、お兄ちゃん、腰抜かすんじゃないかしら」
「でも、内緒にね。正三さんにもね。だってまだ、お話をいただいてないんだから」
「分かりました、内緒にします」
「あなたとわたしだけの、二人の秘密ね」
「か、感激です」
「応援して、頂ける?」
「も、もちろんです。小夜子さまがあたしのお姉さまになって頂けるんですから」
「幸恵さん。二人だけの時は、さまはやめてね」

 今この時、小夜子にもアナスターシアの気持ちが分かった。
喜々として小夜子にアーシアと呼ばせた気持ちが、はっきりと感じ取れた。
更にまた妹ができるというその喜びも、いやアナスターシアにとっては唯一の家族を得ることが出来るのだ。
小夜子の胸の中に、狂おしいほどの溢れんばかりの思いが湧いた。
「これが愛するということかしら」。そう思わずにはいられなかった。
今すぐにでもアナスターシアの元に飛んでいきたい、そう思った。
そしてその気持ちをアナスターシア自身も抱いてくれているのだと、はっきりと確信できる小夜子だった。

「でも、お許しが出るかしら。なんといっても、佐伯ご本家の跡取りでいらっしゃるもの」
「そうですね。両親のことですから、家の格がどうとか……。ごめんなさい、失礼なことを言って」
「いいのよ」
 確かに幸恵の不安は当たっている。
家の格云々の前に、小夜子の行動が問題になるのだ。
正三との結婚は、あくまでアナスターシアに同行するという前提に立っている。
不可思議な思考なのだが、小夜子にとっての正三は、あえて言えばパトロン的存在なのだ。

アナスターシアの元に旅立つためにはそれなりの金員が必要となる。
アナスターシアに用意させるということは、小夜子の中にはない。
それは正三が用意すべきものなのだ。
夫婦になるということの意味は、小夜子も理解しているし、正三に対する思いが金員のためという打算から出ているわけではない。
年に一度はこの地に戻るつもりでいる。
そしてそのときには正三も家族となる、無論アナスターシアと共に。
小夜子とアナスターシアは一心同体であり、分けて考えることのできない存在なのだ。
不条理と思える事柄ではあるものの、小夜子には至極当然の理となっていた。

「でも、兄はそんなこと、気にしないと思います。
普段は両親の言いなりですが、やる時はやると思います」
「大丈夫、幸恵さん。その時は、その時よ」と、小さな笑みを浮かべる小夜子だった。
「あたし、絶対に応援しますから。もう、家に縛られることなんかないんですよね」
「そうね。これからは女性も声をあげなきゃ。
女性が、この世の起源ですもの。原始女性は太陽だった、よ」
「えっと、ひら……」
「平塚らいてふ。闘う女性の代表なの」

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