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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜  (四十七) 

2020年12月17日 外部ブログ記事
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 雑誌の取材では、さながら着せ替え人形のアナスターシアだった。
いつもは渋るアナスターシアだが、今日はまるで別人だ。
着替える度に感嘆の声を上げる小夜子に、気を良くしていた。
「小夜子さん、ありがとう。あなたのお陰でスムーズに運んだって、雑誌社も大喜びよ。
お礼をしたいってことだから、楽しみにね」

 前田の耳打ちに気付いたアナスターシアが、「何を話してたの!」と、前田を問い詰めてきた。
「今日のアナスターシア、一段とキレイねって、話してたの」
 喜ぶかと思いきや、二人だけのヒソヒソ話をやめるようにと言い出した。
そして「どこにも行かないで、あたしの傍に居て!」と、小夜子へ涙ながらに訴えた。
「イエス!」と答えはしたものの、それからが大変だった。

トイレすら、アナスターシア同伴となってしまった。
異常なまでに小夜子に執着するアナスターシアに、皆が不思議がった。
前田がそれとなく聞くのだが「小夜子が好きなの!」と、答えるだけだった。
「身内の方でも、お亡くなりになったのですか?」と片言の英語で尋ねる雑誌社の担当に、
「それはないわよ、絶対に。彼女、天涯孤独の身ですもの」と、前田が答える。
と、突然にアナスターシアの目から大粒の涙が溢れ出た。

そしてアナスターシアの口から語られたこと……、一同を唖然とさせた。
「イワンが死んだの。ちょっと目を離した隙に、プールに落ちてたの。わたし、全然気が付かなくて」
 マッケンジーが、話を補足した。
「アナスターシアの愛犬でね。そりゃもう、溺愛していたよ。
我が家で飼ってたんだが、ひどい落ち込みようだった。
自殺を図るんじゃないかと、心配した。
しかし、小夜子のおかげで立ち直ることができそうだ」
“たかが、犬如きで”。皆が皆、そう思った。

 しかし小夜子には、そんなアナスターシアの気持ちが、痛いほどに良く分かった。
家族愛の渇望、小夜子もまた同じだった。
母からの愛情に飢えて育った幼児期、そして突然の別れ。気持ちの整理がまるで付いていない。
労咳に罹っていた澄江で、小夜子を出産したことから一気に悪化した。
日に日に病状が悪化し、医者もサジを投げてしまった。

「もう、薬を変えるしかない。しかしそれで治るかどうか」と、言葉を濁した。
「どんな薬ですか」と聞きはしたものの、あまりに高価すぎて、茂作には手が出ない。
ミツのことが頭を過ぎり何としてでもと金策に走るが、「可哀相じゃが、金のことは……」と、先々で断られた。
「何ぞの、祟りじゃないのか? ミツさんに続いて娘の澄江さんまでとは」。
そんな囁きがあちこちで聞かれ、誰も関わりを持ちたがらなかった。

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