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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜 (三十九) 

2020年12月01日 外部ブログ記事
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 小夜子は、前田が付きっきりでの世話となった。
まったくの素人である小夜子が、破格の待遇を受けている。
付きっきりでの世話など、ありえないことだ。
棘のある視線が、小夜子に注がれた。
「ひょっとしてあの子、マッケンジーのラバーじゃない?」
 そんな声すら飛んだ。嫉妬心どころではなく、妬み・やっかみの範疇を超えた殺意すら感じる鋭い視線が注がれた。
「いくらなんでもひどいんじゃない」「ふじちゃんはどうなるの」と、非難の声が小声でささやかれている。
小柄な、小夜子と身長がほぼ同じ女性が隅で泣いている。
モデルには厳しい体型が要求される。
まずスレンダーでなければならない。
少しでも腰辺りに余分な脂肪が付いてしまうと、誰からも相手にされない。
そして一番の要求度の高いことが身長だ。一般人の平均値よりも上が要求される。
 マッケンジーのファッションショーにおいて、特別に子供服を登場させることになった。
思春期を迎えた少女向けというコンセプトを元に準備された。
10代後半の少女モデルとして身長の低いモデルが要求された。
そして身長が低いためにモデルとしての仕事に恵まれないふじ枝という女性に声がかかった。
華が感じられないと不満を漏らすマッケンジーの前に、小夜子が現れた。

「気にしないで、集中してね」
「さあ、いいわよ。目をあけてみて」
 メークが済んだ小夜子が見た、己の顔に「ええっ! これが、あたし、ですか?」と、驚嘆の声を上げた。
切れ長に引かれたアイラインが、幻想的な雰囲気を醸し出している。
他のモデルたちにも遜色のない、少女らしいあどけなさの残る中に少しの妖艶さが漂っている。
まさにマッケンジーがモデルに要求する華が感じられる。
あのくすんだ田舎娘の小夜子が、見事に変身を遂げた。
さながら、さなぎから脱皮したアゲハ蝶だった。
一瞬、空気が凍りついた。誰もが目を疑った。
小夜子の起用を決めたマッケンジー一人が、大きく頷いていた。

「ブラボー! ファンタスティックゥ!」
 マッケンジーの声に、その場に居るすべてから拍手が起こった。
そしてその拍手が会場に洩れ、観客全員がなにごとかとどよめいた。
「ミィス、サヨコ嬢の登場です。マッケンジー氏に導かれての、登場です」
 アナウンスの声も、震え気味だった。
どんな場所・場面でも動じることがなかった小夜子が、緊張のあまり一歩が出せないでいた。
マッケンジーに導かれて、ようやくステージに出た。
口を真一文字に結び、伏目がちにゆっくりと歩いた。左手を胸の前に立てて、ゆっくりと。
「OK、OK」と、マッケンジーが満足げに頷いている。
会場のあちらこちらから感嘆の声が洩れ始め、非難の声をあげた淑女からも賞賛の声が。
「マッケンジーって、やっぱり凄いわねえ。あんな田舎娘を、こんな美女に変えるんだから」

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