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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜 (十七) 

2020年10月08日 外部ブログ記事
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 よく晴れ渡った日曜日、正三は駅舎の横に立っていた。
夜も明けやらぬ暗い中、煌々と輝く街灯の下に立っていた。
駅舎の時計をのぞくと、五時二十三分を指している。
先ほどのぞいた時は、二十分だった。
−ええっ! 嘘だろう。まだ、三分? 十分は経ったろうに。
−この時計、おかしいんじゃないのか?

 ブツブツとひとりこぼす愚痴も、小夜子からの呼び出しとなれば、さほどに苦にもならない。
「お待ちになりました?」と、天からの声が降りてきた。正三の耳には、鈴の音だ。
「は、はい。い、いえいえ、そんなには。はい、大丈夫ですから」
 しどろもどろの返事になってしまった。にこやかな小夜子の笑顔が、正三には眩しい。

「ごめんなさいね、朝早くに。わたくしのお願い、聞いていただけるかしら?」
「も、もちろんです。ば、万難を排して、お聞きします」
 正三は、小夜子を正視できない。
俯いたまま、小夜子の黒光りする靴をじっと見つめた。
「実はね、正三さん。あら、わたしったら。
正三さんとお呼びしていいかしら? それとも、佐伯さ…」

「いえ! 正三で結構です。さんなんか、いりません。呼び捨てにしてください」
 小夜子の声をさえぎって、その声に被せるように言った。
「実はね、わたくし始発の列車で、お買い物に出かけたいの。
でね、正三さんとご一緒した、ということにしていただきたいの」
「えっ、えっ? ど、どういうことですか? 話が分からないのですが…」

「祖父がね、わたくし一人では許してくれません。
ですからつい、『正三さんとご一緒よ』と、言ってしまったんです。
それで、話を合わせていただきたいの」
「そういうことですか。おやすいご用です。で、どちらに行かれるんですか?」

(一緒に行きますよ)。どうして、このひと言が言えないのか。
地団太を踏む思いの正三だった。
「東京ですわ。お帽子を買いに行くんですの」
 事もなげに言う小夜子に、“帽子を買いに、東京だって? 隣町の間違いじゃないのか”と、開いた口がふさがらない正三だった。

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