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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 第一部 (一) 

2020年09月01日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



「翼よ、あれがキャバレーの灯だ!」
 チャールズ・リンドバーグが大西洋横断を果たしたときに発した言葉をまねて叫び、ドン・キホーテが大きな風車に向かって突撃した折に突き出した槍のように、服部が腕を突き上げた。
その指差す先に、煌々と光るネオンサインがあった。
「すげえ! ナイトクラブだぜ、おい」
 打ち沈んでいる竹田の肩を叩きながら、山田がはしゃぎ回る。
「専務、あそこですよね。あの、ムーラン・ルージュという店ですよね」 
 興奮気味に、服部が念を押す。専務と呼ばれた男、加藤五平が慇懃に答えた。
「ああ、そうだ。社長に言われたのさ。お前たちを遊ばせてやれとな」

「おい、上をみろよ。空だよ、空。こんなに明るいなんて、昼間みたいだぜ」
「そうだな、ここら辺りは不夜城だからな。いや、竜宮城かもしれんぞ。乙姫さまが居るかもな」
「すげえ、すげえ」と騒ぐ山田や服部の背中を押しながら、沈んだ表情がとれない竹田に目を移した。
「入るぞ、竹田。今夜は楽しめ!」

 五平の先導で、店内に入っていく。
煌々と輝くネオンサインの下を、五平に習って胸を反り返して入っていく。
 大ホールの天井中央で、輝くクリスタルが眩いばかりに光を反射していた。
磨き込まれた床では、深いスリットの入ったチャイナドレスに身を包んだ女給たちが男たちとダンスに興じている。
 ホール奥の一段高いステージ上では、フルバンドで音楽が奏でられている。
全くの別世界に迷い込んだように、三人は感じた。

「いらっしゃいませ加藤さま。今夜は部下の方同伴ですか。
ありがとうございます。おや? 社長さまはどちらに」
「うん。今夜は、社長は欠勤だ。どうやら、皆勤賞は俺がいただきだな」
「加藤さま。月に二度や三度では、皆勤賞は上げられないですよ。
せめて、週一回はお出でいただかねば」
「そうか、そりゃ厳しいな。ふところの財布と、相談しなくちゃな」

「何を、おっしゃいますやら。評判ですよ、富士商会さまのことは。
独り勝ちしてらっしゃると」
「ハハハ…他人の庭は良く見えるもんさ。
今夜は、若い者を楽しませてやってくれ。こいつらなら、皆勤賞を取るかもしれんぞ」
 深々とお辞儀をして立ち去ろうとするボーイに、五平はそっと札を握らせた。
「いつもお気遣いいただいて、ありがとうございます」

「何を、おっしゃいますやら。評判ですよ、富士商会さまのことは。
独り勝ちしてらっしゃると」
「ハハハ…他人の庭は良く見えるもんさ。
今夜は、若い者を楽しませてやってくれ。こいつらなら、皆勤賞を取るかもしれんぞ」
 深々とお辞儀をして立ち去ろうとするボーイに、五平はそっと札を握らせた。
「いつもお気遣いいただいて、ありがとうございます」

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