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敏洋’s 昭和の恋物語り
敬愛する 芥川龍之介 を語る (作品)〜手巾〜
2020年08月13日
テーマ:テーマ無し
芥川の小気味良いほどの心理描写は、今や小気味良いではなく、恐ろしいものとして私にはね返る。
「茶を飲んだものだろうか、飲まないものだろうか。
― かふいふ思案が、青年の死とは全く独立して、一瞬の間、先生の心を煩わした」
よくもマア、こんな心理が書けたものである。
といって、この移り行きを否定するものではない。
むしろ肯定する。
あくまで、想像というより、同じ人間としてそう思うのである。
ここで、この作品のテーマについて考えてみた。
ところが、意外にこの作品は奥深く感じられ、なまじの手では届かない。
端的に言って、何かの否定である。
その何かが何を指すのか、それが問題だった。
武士道? 大正時代の風潮を指すのか? 或いは道徳を指すのか。
それとも、三島由紀夫曰くの「美談」か。
私は、既成道徳の否定ととらえた。
勿論、これはその人の解釈によって、広くも狭くもなる。
私としては、美談否定・英雄否定を含むと言いたい。
そう、既成道徳というよりむしろ時代風潮への反抗とでも言った方がいいだろうか?
しかしそうとすれば、芥川の英雄及び美談否定は、趣味の問題だとの主張が正しいことになる。
私には、唯単に時代風潮への反抗では、言い尽くせぬ根深いものがあると思われるのである。
「――― 私の若い時分、人はハイベルク夫人の、多分巴里から出たものらしい、手巾のことを話した。
それは、顔は微笑してゐながら、ては手巾を二つに裂くといふ、二重の演技であった。
それを我等は今、臭味と名づける」
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