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敏洋’s 昭和の恋物語り

ポエム・ポエム・ポエム 〜夜陰編〜 =ピュッピュッ= 

2020年07月10日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



クスリを5錠口に含み、水をひと口流し込む。
さらに5錠、また5錠、そして5錠――いく粒になった?
いっきに水と共に飲み込む。

手首に充てられたナイフがすべる。
血管から流れ出る血! ドクドク、と耳に大きく響く。

台所のガス栓が緩められる。
シューッ!と いう噴出し音の中、二人の会話が始まる。

 “ほらっ、血がこんなに流れて、綺麗でしよ!”
 “シューッだってさ。ピュッピュッって、なんないの?”

(背景と解説)

心中のシーンです。
リアルではなく、バーチャルということです。
むかしむかしのことですが、映画を観ました。
タイトルも内容も、まるで覚えていません。
ただ、あるシーンだけが残っています。
拷問のシーンなんですが、バーチャル的にみてくださいよ。
テーブルか机の上に、目隠しをされて縛り付けられています。
手足は勿論、頭すら動けない状態です。
そして、下界の音は一切聞こえません。
その部屋だけです、そこでの音だけが聞こえるのです。
さあ、行きますよ、バーチャルですから、ね。

男の耳元で囁きます。
「これから手首を切る。血が流れ出すだろう。知っているな、どれだけの血が流れ出たら絶命するかは」
縛られた男の手首に冷たいものが触れます。
そしてすーっと、動きます。
途端に、床に置いてあるバケツの中から音が聞こえます。
「ぴっちゃん、ぴっちゃん、ぴっちゃん……」
リズム良く音が響きます、部屋の中で。
男が叫びます、命乞いをします。
しかし誰も応えません、誰も居ないのです。
リズム良く音が響きます。
「ぴっちゃん、ぴっちゃん……」

さあ、リアルです。
目隠しをされた男が台の上で身動きできない状態です。
男の手首には傷はありませんし、血も流れていません。
ただ部屋の中に「ぴっちゃん、ぴっちゃん」と水が滴り落ちる音がしています。
実験中なのです。
その後男がどうなったのか……覚えていません。あまりの恐怖に、目を閉じて耳を塞いでしまっていたような気がします。

戻ります、この詩のキモは[シューッ、ピュッピュッ]です。
死への恐怖感を描いたつもりなのですが。

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