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敏洋’s 昭和の恋物語り

せからしか! 

2020年03月04日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



大人たちですら尻込みをする場所なのだ。
しかしだからこそ肝試しと称して、少年たちの絶好の遊び場になっている。
無論、そこでの飛び込みは厳禁とされている。
立て札が何ヶ所にも建ててあり、時折地元の大人たちが見回りに来るらしい。
しかしその時間帯は子どもたちに知られている。
なのでその時間帯には岩陰に隠れてやり過ごす。

 少年は兄をそこに連れ出したいのだ。
そして自分の勇気を、ヒーロー然とした自分を見せたいのだ。
兄にしても興味はある。
あるけれども、父に、私をひとりにするなと厳命されている。

 もしもそこに私を連れて行けば、必ず父の耳に入ってしまう。
その時の怒る父の顔を思い浮かべるだけで身体が震えてしまう。
だから、その誘いには乗れない。
少年がどんなに兄を「弟のせいじゃない。怖いんだと」と腰抜け呼ばわりしても、兄は行かないと断り続けている。

 以来、その少年に意地悪をされ始めた。
家から持ってきたお菓子類を兄には食べさせても、私には一切手を出させなかった。
兄が自分の分だからと私に渡そうとすると「なら、やらない!」と取り上げてしまう。
そして必ず言う言葉があった。
「こんなチビには辛すぎる。きっと泣くに決まってる!」 
「そうかも……」
 と、兄も納得してしまった。

(そうじゃない、きっと美味しいんだ。
二人だけで食べたいんだ。
ぼくが、やっぱりじゃまなんだ。
いいさ、父ちゃんに言いつけてやるから)

 しかし結局は何も言わなかった。
子ども心に、男らしくないと思ったのだろう。

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