ほっこり

亀さんのひとり言(小話) 

2019年08月05日 ナビトモブログ記事
テーマ:小咄

(※R50指定小話)



「暑い!暑い!どうにかしてくれ!」

今の時期は人間共が、毎日毎日、そう叫び、苦しみ、耐え、汗だくになる季節らしい
それを人は「夏」と呼ぶ
おれ様は教養豊かなカメだから、先刻ご承知だ
もっとも、この事は、最近、広辞苑で知ったことだから
おれの彼女には内緒にしてくれよ
インテリジェンスの塊り
クールでダンディーが、もっぱら、カメ仲間での評判だ

女には不自由はしない
何処の誰かは知らないが
コンビニとやらで買ったチキンの食べかすを川に投げ入れる人間様がいる
おれはそれをくわえ、彼女に愛を込めプレゼントするだけだ
エコだろ、金なんか使わない

それだけで愛を手に入れている

冬場は寒さに耐え切れず、春まで土の中で眠る
先祖代々、そうやって長生きしてきた
しかし、今の季節は気持ちいい

夜明けと供に、日課の水泳で体をほぐす
昼間は岩の上で甲羅干し

頭は暑くないのかい?
甲羅の中は今、何度?
甲羅干しなんかして熱中症にならないのかい?

そんな視線を送りながら、エサを投げ入れてくれる爺さんもいる
むしろ、自分のことを心配したらいいと思うのだが、巧く言葉に出せない。水遊びのカメのことより、自分の心配したら?
熱中症に気をつけて欲しい

これは一種のフラストレーションでもある

風に揺られて、茎から離れた水色の花が水面を漂う
大好きなおやつだ
これで夏を味わう
この季節ならではのデザートでもあるんだ
おれって結構グルメなんだよ

甲羅干しの時は両手両足を思い切り伸ばす
背伸び健康法だ
頭を持ち上げ、首筋も伸ばす
これが一番楽でいい、爽快な気分だ
その姿を見た人間の反応も面白い
人間のオス共の大半はニコッと微笑む
「おれの負けだ!」などと言って首を伸ばして笑う
何故なんだろうか?
一度、人間に尋ねてくれ

しかし、カメと人との付き合いは古い
浦島太郎を竜宮城に連れて行ったのは遠いご先祖様だ
鶴は千年亀は万年と言って縁起もいい
毛利のお殿様の墓石は亀が支えている

童話で「うさぎとかめ」言う話がある
のろまなカメさんが通り相場
少し不愉快な話だ

逆に、アキレスはいつまで経ってもカメに追いつけないと言う話もある
個人的にはこの話が正解だと思う
アキレスがいくら頑張っても、おれがその直前にいた地点に彼が着いた時には、おれ様はその先を歩いている
それ以降も同じ事の繰り返し
だから、距離は縮まるが、いつまで経ってもアキレスはカメに追いつけないのだ

頭の悪い人間さん、ご理解頂けたかな?

そろそろ、岩場を離れ、最後の一泳ぎをしてねぐらに帰る時間だ
泳ぎ始めると小魚達が取り巻いてぐるぐる輪になってくる

これ、又、理由がわからんが、そう言うものなんだろう

小魚の気持ちまでは感知(関知)しない



・・・・・

♪うさぎとかめ
https://www.youtube.com/watch?v=n_cip1IEejU
たまには童謡でも聴いてみるか!

♪Davy Graham〜My Babe 2:47
https://www.youtube.com/watch?v=T7SikGt-t2g&t=13s
夏場はリズミカルな曲に限る


★「レディ・ガガ」に拍手頂き有難うございます。個々の御礼、足跡は残していません。どうか、ご容赦ください。エアコン故障から一週間以上が経過しました。結局、新しい物に替えました。もう一歩で「爺の干物」完成でした。「いや〜涼しい、極楽じゃぞ」



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