ほっこり

日暮れのカフェ　

2020年06月02日 ナビトモブログ記事
テーマ：小咄


すっかり高くなった初夏の太陽が
やっとねぐらに帰るとき
柔らかく和らいだ光が
数条の束となって
連なるビルをうっすらと赤く染める

仕事帰りの人達が
街中に溢れ出し
都会の夕暮れが
ひときわざわめく

その頃合いを見計らって
ひとりお洒落なカフェに佇んでいた

オープン・カフェのテラス席
白い丸テーブルに座った
ビルの谷間の路に面していて
背の高い欅の街路樹から木漏れ日が差している

注文はブレンドのホット珈琲だ
ストーロー片手のアイスは
孤老に似つかわしくない
ここの店はブレンドが一番

やはり、陶器の白いカップに入ったホットがいい
まずは炒り立て珈琲の香りをたしなみ
最初の一口を舌で転がし味を楽しむ
カップからあがる湯気が心地良い
鉢植えの観葉植物の葉が揺れている
初夏のそよ風が優しく頬を撫でる

目の前の歩道は人で溢れている
右の席では３人連れの娘さんが彼氏の話で盛り上がっている
左では若いカップルがスマホ片手に何やら相談中
その奥ではスーツ姿の男がパソコンを開いている
十数席ほどのテラス席は満員だ

始めの内は歩く人の靴音
通り去る車の音
テラスでの話し声に
都会の喧騒を感じていた

私は珈琲カップを見つめながら
過去の想い出に浸りだした
幼稚だった自分
若かったあの頃

やがて夢の女神に誘われて
己の世界に深く沈み込んでいった
この世の時と空間から解き放たれたのだ

もはや、いかなる音も声も聞こえない
目の前の映像は霞の彼方に去り
脳内のスクリーンに映し出された
映像と音のみが支配する世界へと
私は落ちた

音なき音が聴こえ
見えない世界が見える

私は一杯の珈琲で過去に甦った

今は真夏
ランニングシャツに半ズボン、頭には麦藁帽子
捕虫網片手にアブラゼミを探している

柳の幹に止っているのは確かだが
見つからない
セミは鳴くのを止めた

ここからお互いの根気勝負が始まる
ボクも息を潜め静かに体を沈めた
果たせるかな鳴き出した
ここだとばかり網をかぶせる
しかし、セミの動きが一瞬早かった
彼は別の木へと飛び去って見えなくなった

ここで珈琲を飲み干し
しばしのまどろみに別れを告げて
この世に戻った
くすっと一人思い出し笑いをし
恥ずかしくなって
周りを見渡した
誰も関心なんかない
良かった

相変わらず世間は騒がしい
席を離れると
人混みに紛れ
余韻に浸りながら
家路を急いだ



♪Summertime ～Gunhild Carling Live 6:16
https://www.youtube.com/watch?v=UQG_EvQjkEQ&list=PLl801Z2Yiex7BRq21-0tZ5bkS4Vdb3Xqf&index=12
夏のけだるさ、哀愁を奏でるメロディーはいかがですか？


※　本日２本目の投稿です。朝投稿の「誹謗中傷」ご覧頂き、拍手・コメントありがとうございます。姿の見えぬ多くの人が一人の女性の命を奪いました。法律制定に政府も動き出したようです。決してあってはならないことです。イジメはいけません。まさか貴方はしていませんよね？



拍手全ての拍手(32)
拍手する

<< 前の記事へ　／　次の記事へ >>
記事一覧を見る

コメントをするにはログインが必要です

かをるさんへ

ぼてふりさん

コメントありがとうございます。

体験と想像を細切れにしてまとめ、書いてみました＾＾
朝のモーニングどきと夕暮れのカフェでは趣が異なりますね。

何らか思いに耽るひとりの時間もいいものです。
お洒落に読書などいいかも・・。
ひとりの時間は私のものです。

2020/06/04 22:17:24

ポエム

かをるさん

素敵なポエムの世界です。

なかなか粋ですね！

日暮のカフェでワタシもついまどろみそうになりました。

2020/06/04 21:54:11

めぐりん＊さんへ

ぼてふりさん

コメントありがとうございます

どこの町にもあった小さな喫茶店、少なくなりました
赤煉瓦や少しよごれた壁に小さなすりガラスの窓
店舗の入り口に「モーニング350円」と書いている
そんな店は少なくなりましたね

京都市三条川原町下がる東側・六曜社
ネットで見ると内装が今風に変わっていますが、昔は壁を背にして細長いテーブルが並んでいました
ブレンドのみ250円、ここは必ず一人で行く喫茶店（サテンて言ってました）でした。薄暗くてモノトーンな雰囲気が良かった。音楽は小さめでジャズやブルースが流れていましたよ。最近はスタバ、ドトール、ヴェルチェ、コメダのようなチェーン店ばかりになりましたね。
今出川付近にはそれこそ学生街の喫茶店が多くあって、仲間たちと行ってたものです。
ドアがカランコロンていうお店～サークルのたまり場でした。
そうそう京都三条のイノダ・コーヒーも良かった。
琥珀という細い階段上がって２階にあった喫茶店はポピュラー音楽、リクエストもできました。マスターひとり～古臭くてお洒落～ここも一人で行っていました。色んな想い出があるものです。

2020/06/02 23:17:40

こんばんは

めぐりん＊さん

私は、今どきのカフェよりも
昔ながらの喫茶店が好きです。

それもお店の隅の方。
深々としたソファー席でコーヒーを飲みながら
ボーッとまどろみたいです。もちろん一人で。


ドアの開閉時にカランコロンって音がする
喫茶店～そんなお店は少なくなりました(*´-`)

2020/06/02 21:02:12

dai-chanさんへ

ぼてふりさん

コメントありがとうございます

自分だけの空間
孤独ではないのです
ゆったりとした
時が止まった世界
自分にお洒落でありたい
そんな時って幸せですよね

アルトサックスいいですね！
私はギターだからどんな感じで弾けばいいのでしょうか？
やはり、サックスがお洒落でいい！
又、吹いてくださいね（＾＾）

2020/06/02 16:04:54

カフェで独り飲むのも素敵だな

dai-chanさん

多分、お洒落なカフェのような、ロマンティック
な感じです。
♪Summertime はアルトサックスを始めたころに
奏でた曲でした、また吹いて見ようかな、

2020/06/02 15:58:02

宏子さんへ

ぼてふりさん

コメントありがとうございます

自分だけの時間を過ごせる場所って必要ですよね。
いい感じで時がゆったりと流れる
そんな空間は誰にも邪魔されない

一杯の珈琲いかがですか？

2020/06/02 14:58:10

喫茶店

宏子さん

今日は胃腸科に行く途中時間調整
いつもの喫茶店
静かで過ごせます。
一人の時間好きです。

2020/06/02 14:45:33

PR







上部へ