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BA★BAR（歴史寓話〜その２）　

2019年05月15日
テーマ：小咄

西暦2019年、令和元年５月

まだ、風が涼しい、とある繁華街の夜・・・

初老の男二人がほろ酔い加減で居酒屋から出て来た。

「久し振りに一緒に飲みましたな〜」

「色々話せて楽しかったよ」

「夜はまだまだ長いですね〜。どうです景気づけにもう１軒飲みに行きませんか？」

「そりゃそうだよ。女の子のいる店がいいな〜」

・・・と言う話がすぐにまとまり、飲み屋街へと、足取り軽く歩いていたのでした。

この初老の男二人は７０歳を過ぎた同学年。

大学は違いましたが、当時さかんだった学生運動の活動家だった。二人は同じヘルメット（赤か黒か白かは定かでないが）〜活動を通じて知り合った「仲間」であった。戦友と言った方が、当時は適切だったと思う。

ヘルメットにタオルのマスク、ゲバ棒の４年間の学生生活。しかし、卒業を機に活動を止め、それぞれ大手企業に就職した過去も共通していた。
有名大学のふたり、頭も良かった。

今日は数十年振りの再会なのだ。

一人は「伊藤」

この男は卒業後、大手商社に入社し、抜群の営業センスで、K国の支社長まで出世した経歴を持つ。
温和な性格で人身を掌握する才に長けていた。
しかしながら、現地での労働争議に巻き込まれ、暴力沙汰で重傷を負い、国内へ帰還、その後は鳴かず飛ばずで
定年退職した。

彼の長所と言うか欠点は「人の心を捉えるのが天才的」なことであった。
学生運動の最中でも「女性」には不自由しなかった。

「夜のゲバ棒活動家」と仲間からも呼ばれていた。
彼の「女好き」は並大抵の男では太刀打ちできなかった。女心の掌握も天才的だった。

結婚してからもその女好きの勢いは止まらなかった。

子宝にも恵まれたが、お手伝いさん、ﾍﾞﾋﾞｰｼｯﾀｰさん、行きつけのクラブのママ、チーママ、同僚女子、人妻・・

女性とみれば口説いた。

仕事もできるが女にも強い、伊藤はそんな男であった。


一方の「大久保」は正義感が強く、曲がったことが嫌いな男であった。
彼は大手銀行に就職した。
彼も伊藤同様に押しが強く、仕事ができた。
各支店を営業職、係長、支店長代理、次長と廻り、３店舗の支店長を歴任、最後は本店の管理部門に役員待遇で栄転した。
しかし、バブルの崩壊、その後の権力闘争に敗れ、いさぎよく職を辞したのであった。


話を元に戻そう。


そんな訳でこの旧友二人は夜の歓楽街を彷徨い、

「いい店」を探索している最中である。


大久保「若い女の子がいるキャバクラなんかどうだろうか？」

伊藤「お互い７０歳過ぎてるんだぞ。ホステスは皆孫みたいなもんじゃないか、話が合わないし、気を使うよ」

大久保「ははは〜。かつての夜のゲバ棒活動家も歳には勝てぬか〜ははは〜こりゃ愉快だ〜」

いわゆる、ネオン街と呼ばれる通り、今はLEDの照明が眩しく、男共を甘美の世界へと吸い寄せる。


大久保「キャバクラばかりだな〜」

伊藤「まだ時間はたっぷりあるよ。楽しみながら夜の街見物といこうや」

・・・などと軽口飛ばしながら歩いている二人の目が
ある店の看板に釘付けになった。


「BA★BAR」


一人がやっと通れる位の入り口は電飾で煌びやか。

黒のスラックスに白いカッター、黒のベスト、蝶ネクタイ姿のボーイが入り口に立って呼び込みをしている。


「ワンセット・２９８０円・６０分飲み放題」

「高齢者の方々が楽しめる夜のオアシス」

「コスチュームを纏った美女達が今宵の恋人」

「本日,初夏のBBB４８・総選挙!大サービス中！」


二人は顔を見合わせ、阿吽の呼吸でうなずいた。

大久保「ここにするか」

伊藤「ほい来た！」


・・・続く


・・・・・・・・・・・・・

♪Amazing Grace 2:32
https://www.youtube.com/watch?v=-HLn3HVt4DU

昨日と同じオートハープ奏者による演奏です。
あまりにも有名な曲ですね。

昨日の「歴史寓話〜その１」に拍手頂いた皆様ありがとうございました。相変わらずの拙い小話ですが、これからもお付き合いの程、宜しくお願い致します。

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