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パトラッシュが駆ける!

二つ折り終了 

2018年11月03日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

新しい言葉が、次々に生まれる。
世の中が変化し、従来の語彙では、表現しきれないからだ。
とは言うものの、新語とて、長く生き延びるのは、難しい。
時代の流れに、取り残されれば、すぐに、ゴミ箱行きとなる。
つまり新語は「多産多死」であると思われる。

そんな中でも、時に秀逸なのが生まれる。
「ガラケー」も、その一つ。
スマホが全盛となり、かつての旧式な携帯電話を嘲り、
この言葉が生まれた。
恐竜と見まごう、特異な生物が生息する、
南米ガラパゴス諸島に、擬えているそうだ。
過去の遺物、滅び行く運命というものを込めた、
これほどの比喩はない。
もしも、言葉に特許というものがあったなら、
この作者は、大儲けしたに違いない。

但し、この「名語」とて、その運命は限られている。
電車の中を、見回して見給え。
百人中、九十九人がスマホを手に、操っている。
ガラケーを手にする者など、一車両にまったく居ない時もある。
絶滅寸前、まさに、ガラパゴス諸島の珍獣と同じだ。
物が消えれば、その名も消える。
それは、時間の問題であると思われる。

私は、そのガラケーを使用していた。
周囲の人々が、次々に、スマホへ乗り換える中で、
私は、その流れに逆らっていた。
通話とメール、私が携帯電話に求めるのは、
そのくらいのものだ。
用が足りれば、いいじゃないか……
先を争って、新奇なものに、飛び付かなくても、
良いではないか……
という頭があった。
だから私の場合、携帯を「愛用」でも「頻用」でもなく、
単に「使用していた」に過ぎない。

多少は、依怙地になっていたところもある。
世の中の流れに、掉さす者が、一人くらい、
居てもいいではないか……
敢えて、ガラパゴスの珍獣になってやろうじゃないか……
という反逆心もあった。

電話機が堅牢で、故障の起きなかったこともある。
壊れたその機会に……という、その機会が訪れなかった。
それで、ずるずると、今日まで付き合ってしまった。
いうところもある。
これ、何かに似ているのだが、うっかり喩えに持ち出すと、
怒られるのは必定だから、止めている。

その私が、スマホに替えた。
きっかけは、些細なことであった。

 * * *

私の、古くからの知人に、Aという男が居る。
八十を超えている。
「おれは、携帯なんか、持たないんだ」
かねてから、嘯いていた。

「そんなもの持ったら、うるさくって、仕方ねえ」
と言うのは、まんざら強がりばかりでは、なかったようだ。
Aは、束縛されることを、何より嫌う、自由人であった。
「そんなもの、なくても、生きて行ける」
その通りなのである。

そのくせに、Aは、車の運転を止めなかった。
奥さんや、娘さんからの、苦言もものかわ、
ちょっとした外出にも、車を用いていた。
遠くの酒屋まで、そこでしか売っていない、銘酒を買いにである。
そのいう事がいい。
「重いからな、酒は」

人間と言うのは、様々だ。
これを価値の違いと言ってもいい。
ある者にとって、欠くべからざるものが、
ある者には「あんなもの」となる。
その一つの、例となる人であった。

そのAが、私のサロンにやって来た。
「今度、こんなもん、持つことになってな……」
懐から取り出したのは、あれほど無用視していた、
携帯、それもスマホではないか。
「この間、信州に行って来た。ほら、紅葉が始まっている」
画面をスライドさせ、指先でポンポンと叩き、
写真を映し出して見せた。
「拡大してやろうか、ほれ」
その紅葉が、たちまち、アップになる。
私は、唖然として、Aのその、指先を見ていた。

これ、一つの裏切りではあるまいか。
私は、私の後ろに、少なからぬ人が居て、
それを時流に背を向ける、同志のように思っていた。
それが、気が付いたら、私の前を歩いている。
「どうだ」と言わんばかりに、元気に歩いている。
私はAの、後塵を拝することとなった。

 * * *

駅前に、ドコモショップというのがあり、そこは何時も、
客が立て込んでいる。
待つのが嫌いな私には、近付きたくない場所でもあった。
しかし、背に腹は代えられない。
私は意を決し、そこへ足を踏み入れた。

「本日は、どんな御用で?」
店員が来て、尋ねた。
「機種変更です」
私が答えると、アンケート用紙のようなものを渡され、
記入を促された。
たかが、電話機を一つ買うのに、この煩雑さは、どうであろう。

私が、娘婿の、家族割引に入っていたのが、問題を複雑にした。
やれ、了承を得たか、料金が今後どうなるかなど、
うるさいことばかり言う。
よほど席を蹴り、帰ってしまおうかと思ったが、
大事の前の小事、さながら、討ち入り前夜の、
赤穂浪士のような気分で、隠忍を重ねた。

入店し、晴れて機器を手にして、店を出るまで、
およそ二時間かかった。
世の多くの皆さんが、こんな苦労をしてまで、
スマホを手にしているのであろうか。
私には、とても信じられない。
ちなみにAは、孫娘が全てを、代行してくれたそうだ。
私には、そんな孝心に溢れた、子孫が居ない。

 * * *

「えー」
スマホを手に、帰宅したら、妻が驚いた。
偕老同穴、夫婦そろって、ガラケーのまま、
あの世へ行くつもりだったらしい。
突然の私の変心が、裏切りに見えたかもしれない。

「ほら、簡単だろ」
さらさらと、操作するところを見せてやった。
「……」
「スマホなんて、猿だって出来る」
「……」
黙っている。
笑いもしない。
怒りもしない。

彼女が、スマホに乗り換えるのは、
時間の問題であると思われる。
となると、私の周辺から、ガラケーが消える。
ガラケーが死語となる日は、そう遠くないのでは、あるまいか。



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どうぞよろしく

パトラッシュさん

彩々さん、
ご激励をありがとうございます。
このまま、スマホを扱わずにいると、なんだか、人生の落伍者にも見えかねず、とうとう人並みの暮らしを、求めることになりました。
ご指導ご鞭撻を、お願い申し上げます。

2018/11/05 13:41:55

今や必需品

彩々さん

お疲れ様です(笑)

新しいテクノロジーを生活に追加すると
不安・緊張・喜び・便利さと不便さ、
などなど、おまけに付いてきますね。

スマホを自分のモノにするまで、ちょっと
大変ですが使いこなすと、手帳も、カメラも
筆記用具、手元照明、地図など不要となり
持ち物がぐっと減りますよ。

新しいものへの挑戦にお互い挑んで
行きましょう!
ガンバ!

2018/11/05 08:49:01

お邪魔します

パトラッシュさん

Reiさん、
皆さんの後塵を拝しつつ、周回遅れで付いて行きます。

2018/11/04 07:13:56

いらっしゃいませ!

Reiさん

スマホの世界へようこそ(^^)

便利なものは取り入れる…私はそんな感覚で使っています。
グループラインのお仲間になれるのも、もうすぐかもしれませんね。

私の高校の同級生で、絶対に携帯を持たない頑固な人がいます。
でも彼女と会っている時、急用ができたらしく、私のスマホを通じてご主人から呼び出しがあったりして…
今では、皆に迷惑がられています。
頑固もほどほどにした方がいいですね(≧∀≦)

2018/11/04 06:38:46

シシーマニアさん

パトラッシュさん

人生の大方は、やり尽くしたような気がします。
そりゃ、やり残したことも、数知れず……
しかしながら、エネルギーが……

2018/11/04 05:58:35

師匠!

シシーマニアさん

まだ、終了していないことも、おありではないかと・・。

2018/11/03 22:24:46

私はこれからです

パトラッシュさん

喜美さん、
貴女の行動力には、かねがね敬服しておりました。
私より先に、スマホをお持ちになるなんて……
ラインのことは、吾さんから聞いております。
使いこなしていらっしゃるんですね。
大したものです。
私はこれから、ラインのことも、勉強します。

2018/11/03 18:11:05

乗り換えは慎重に……

パトラッシュさん

漫歩さん、
私は、スマホに乗り換えたものの、今のところ、電話とメールくらいしか、使っておりません。
つまり、ガラケー時代と同じです。
わずかに、画面が大きくなり、操作しやすくなったことくらいかしら……変えた効果は。

見栄を張らなければ、ガラケーで十分です。

2018/11/03 18:08:37

ライン

喜美さん

私は何気なく娘が一緒に買うと安くなるとか 私のは老人用らしいです 其れも解らず 持たされたのですが 今も
孫からラインで長い間曾孫の顔見ながら 話しました その点はとても良い事です あと吾さん達の仲間に知らない間に入れて頂き皆さんの行動など
良くわかります 最も私解らずの老人ですから まごまご返事書いている間に次の話のなったり 迷惑な事度々あると思います

2018/11/03 16:52:04

たかがスマホ、されどスマホ〜

漫歩さん

私は15年間ガラケーです。

相手は90%以上子供たち(通話無料)で、他は一般
通話で事足りますから殆ど無用なのですが、車で行動することが多いので、もしもの事を考えて基本料を払い続けています。

通話料が引き下げられらたら、余計なソフトがついていない安いスマホに替えようと思っています。

2018/11/03 15:20:06

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