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天ざるの夕食　

2017年06月30日
テーマ：シニアライフ

我が家の近辺は、極端に坂が多い。

場所によっては、坂に階段が付いている処もある位に。


私の住むマンション群は、その高低を利用して建てられている。

我が家は三階ながら、このマンション群では最高階となる。

そして、道を少し降りていくと、お蕎麦やさんがある。


以前、その店は殿様商売で、盛りそば1000円といった高い値段を逆手にとって話題を呼び、お昼時等は駐車場にいっぱい車が並んでいた。

名古屋にはお蕎麦やさんが少ない、と言う事もあるのかも知れない、

コストパフォーマンス派の主人は、好みでは無かったけれど、私はどうしてもお蕎麦が食べたくなると、時折出かけたものだ。


しかし、時代の波には勝てなかったのか、数年前に建物はそのままながら、看板と内容と、多分オーナーが変わって、庶民的な商売を始めた。


名古屋に来てからは、主人と二人暮らしの気楽さで、よく飲みに出かけたけれど、主人の病気が再発してからは、余り外出はできなくなった。


退屈している私を、主人は慮ったのかも知れない。

「夕食は、新しく出来た、蕎麦屋に行ってみようか」と言い出した。

只、其処までは、距離は短いけれど、帰り道の上り坂が結構厳しい。

「それぞれのマンションのエレベーターを、乗り継いで降りて行ってみよう」と、主人が言う。


まず、我が棟のエレベータで一階まで降りて、エントランス棟のエレベータで地下の駐車場に降りる。

そこから、中庭を通過して、マンション群の中の、別の棟のエレベータで更に地階まで降りると、その棟の正面玄関があり、そこから外に出る。

そこからは、お蕎麦やさんまで、すぐなのであった。

晩年、外食は其処くらいしか行けなくなったので、何度も行った。

私は近いだけで満足していたが、無口な主人はきっと、一人で楽に到達する行程を、地味に考えていたに違いない。


昨日、ナビ友の吾喰楽さんに教えて戴いた、通販のお蕎麦が届いた。

昼間、デパートへ行く用事があったので、ざる蕎麦セットを購入した。

配達時間を、18時〜20時に指定したので、夕食は天ざるに決めた。

20個注文したので、冷凍庫をちょっと整理して、場所も作った。

それは、消費期限の短い生麺なので、吾喰楽さんの様に、冷凍しておくつもりだったから。


考えてみると、生麺を茹でたのは、人生で初めてだったかも知れない。

お蕎麦は基本、お蕎麦やさんで食べるもの、だし、間に合わせの備蓄品としては、乾麺しか使ったことが無かったと思う。


名古屋は、うどん屋さんに比べて、お蕎麦やさんが少ないと思う。

更に、外食嫌いの主人が、体調を崩してからは、家でお蕎麦を茹でることが多くなった。

しかし、乾麺のお蕎麦を美味しく茹でる技が、残念ながら私には身につかないのだ。



夕刻、６時半位に、待ちに待ったお蕎麦が届いた。

早速始めた夕食は、私の期待を充分満足させてくれて、それは、エレベーターを乗り継いで行ったお蕎麦やさんにも匹敵する味わいだった。


茹で技は、乾麺に比べて、生麺は遙かに易しいのではないだろうか。


かき揚げと共に食べた、天ざる夕食は、久々にビールも進んだ。

色々な思い出も、恰好な付け合わせになったと思う。


主人の写真の前に置いた、グラスのビールが、全然進まないのには、ちょっと不満だったけれど。

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