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敏洋’s 昭和の恋物語り

[舟のない港] (六十九) 

2016年07月04日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 その夜、意外なことに夫人は冷静だった。
夫への愛情は、子供を産んだ時から醒めていたという。

一時の気の迷いからの結婚で、失敗だったこと。
処女を捧げたという、唯それだけの為に家族から無理強いされたこと。

卒業後の進路にしても、親の言いなりだったこと。
姑ともうまくいかず、夫である社長が姑の味方に付いた時のショック。

それらが、愛情を失わせた、と。
大きくため息をつきながら、話した。
男の歓心を買わんとする様子が見えた。

 淡々と話す夫人が、男には不思議だった。
愛情を失った相手の浮気に対し、何故あれ程に荒れたのか。
知りたいとは思ったが、さすがに聞けなかった。

夫人は、妖艶な笑みを浮かべながら、
「どうして、あの修羅場になったのか不思議なのでしょう?」
と、男の耳元で囁いた。
「ええっ、まあ‥‥」

「いいわ、教えてあげる。でも、ここじゃ駄目。これ以上の痴話話は、ね」
渋る男を、夫人は無理矢理マンションに連れ込んだ。
社長には内緒のマンションだと言う。

どうやら、夫人も浮気をしているらしい。
唯、特定の相手は作らないらしい。
どうも男の事も、前から目を付けていたようだ。

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