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敏洋’s 昭和の恋物語り

[舟のない港] (五十七)  

2016年06月11日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



男は、消えてしまいたかった。よりによって、今夜会うとは。
「どうなさったの? お疲れのようね。
ごめんなさいね、父がご迷惑をかけたみたいで。
会社をお辞めになったと聞いて、心配してましたのよ」

あの高慢な麗子の言葉ではなかった。
心底に心配しての言葉として男の胸に入り込んだ。

「わたし、あの後に父の勧めるままに、あの方の後妻に入りましたの。
貴方とのことも、快く『若さというものは、羨ましいものだ』と、言ってくれまして。
わたし、今夜の貴方を見てますと悲しいですわ。
わたしが愛したお方は、もっと強いお方でしたのに。
自信にあふれた方でしたのに」

「それはおめでとう。今夜は特別なんですよ。
明日からのスパートの為に、少し羽目を外しただけです」

精一杯の言葉だった。
麗子の父親に対しては、恨み辛みの思いが渦巻いている。
しかしそれを口にしてしまえば、自分が惨めになるだけだ。

これ以上の会話は、男にとって苦痛以外の何ものでもない。
男は、重い足取りで店を出た。

まるで別人の麗子だった。
しっとりとして、どこから見ても重役夫人の気品が漂っていた。
店を出る時に会釈をしたその紳士は、泰然自若としていた。
風格さえ感じる。

男は打ちのめされた。
あの紳士故に、今の麗子があるのだろう。
自分では、到底 創り上げられない芸術品になっていた。

あれ程の良い女だったのかと愕然として、己の未熟さを思い知らされた。
麗子の父親の眼力に敬服させられた。
幸せそうな麗子を目の当たりにし、今まで抱いていた恨みつらみが氷解した。

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