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敏洋’s 昭和の恋物語り

[舟のない港](四十一) 

2016年04月27日 外部ブログ記事
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その夜の食事は、今の男が望むべくもないものだった。
この家族に囲まれて育ったミドリだからこその、異性に対して無防備だと思えた。

皆が皆、いい人だった。
人を疑うことを知らない母親。
他人に対して寛容な兄。
開けっぴろげで快活な妹。

そんな四人家族との夕食は、とに角楽しかった。
ミドリだけが 顔を上気させたまま、口数が少なかった。
男の顔をまともに見られなかった。
男にしても多少の罪悪感もあり、兄の道夫との会話だけだった。

「それにしても、本当にこの世間知らずの娘が、ご迷惑をおかけしたそうで申し訳有りませんでした」
と、母親はしきりに男に言う。
「しかし酒に弱いこいつが、いくら 同僚の女子社員だけだとはいえ」
と、道夫が言う。
男には、ミドリがどう家族に説明しているのかわからず、「いえ、いえ」と、答えるだけだった。

「ねえ、ねえ、お姉ちゃん。ナイトクラブってどんな所? 
女性だけで行っても、恐くない所? 
でも良かったね、武さんがたまたま居てくれて。
武さんは、恋人と行ってらしたの?  
私も行ってみたいなあ、だって、帰ってからのお姉ちゃん、すっごくご機嫌だったもん」

妹の言葉で、やっと状況がわかった。
「これ、これ」と、母親にたしなめられた妹は、ペロリと舌を出しながら
「へへへ。私だってもう二十歳になったのよ、いいじゃない」
と、応じた。

「ハハハ、じゃお兄さんに連れて行ってもらいなさい」
と、男も会話の中に入った。
「嫌よ、お兄さんは。堅物すぎて、ダメ! 武さんと行きたい。絶対、武さん」
と、上目遣いで男に言った。
「今日は、大安かな? こんな若い女性にもてるなんて」と、男は軽口を叩いた。

「いい加減にしなさい、美都子。
武さんだなんて、失礼でしょ。
御手洗さんと呼びなさい。わたしだって、まだ‥‥」
ミドリの気色ばんだ声に、皆が驚いた。
男も、驚いた。

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