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敏洋’s 昭和の恋物語り

[舟のない港] (三十三) 

2016年04月13日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 しかし、ミドリの心は大きく揺れていた。
会って間もない男に、これ程に熱い思いを抱いてしまった自分が信じられなかった。
不可抗力のこととはいえ、自分の肌を見られたという思いが消えなかった。

 無理をすれば一人で出来たかもしれなかったことを、男の手をわざと煩わせた。
酔いのせいもあったが、ミドリ自身わからずにいた。
「これが恋なの?」 と自問してみた。
が、ミドリにわかるべくもない。

 タクシーの中では二人とも無言だった。
お互いがお互いの思いを持て余していた。
やがて、男のアパートに着いた。
男は、「送らなくていいのかい」 と念を押したが、ミドリは、軽くうなずいてドアを閉めさせた。

 部屋に入り、時計を見ると十一時を指していた。
やはり 送っていくべきだったと悔やまれた。
何と言い訳をするのだろう、まさか俺とのデートなどとは言えないだろう。
といって、送り届ければどうなる、と逡巡するものの、答えは見つからなかった。

今の俺は、先のない男だ。
会社をいつ辞めることになるか。
麗子は、去っていった。
彼女にしてもそうだろう、今の俺を知れば‥‥

 相変わらずの怠惰な日々が続いた。
出社時には玄関を通ることを避け、通用門口から入ることが多くなった。
受付嬢たちの蔑むかのような視線に耐えられなくなってきた。
かつての同僚たちと顔を合わせることも辛くなっていた。

 その日もいつものように地下の資料室から人目を避けるようにして、守衛室前を通り退社した。
事情を知る守衛が、いつものように敬礼のポーズを取ってくれる。
「良い日が来ますよ」とでも言いたげに、柔らかな笑みを見せている。
男もまた、いつからかしか敬礼のポーズを返すようになっていた。

「なにか良いことがありましたか」
珍しく守衛が声をかけた。
「相変わらずです」
短く答えつつも、男の表情に柔和さが漂っていた。

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