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バラード第一番 

2016年02月15日 ナビトモブログ記事
テーマ:音楽

ショパンの「バラード第一番」が、生活の中心にある、という毎日は心地よいものだった。

現在わが国では、もしかしたら、クラシックのピアノ曲として、最も有名な曲なのかもしれない。

羽生結弦選手の華麗なる演技を、きっと皆思い描くだろうから。


でも、何といってもこの曲が素晴らしい。

音楽批評をしていたシューマンが、「諸君、脱帽したまえ、天才だ!」と紹介したという有名なエピソードが、一層この曲の非凡さを引き立てる。


左右両手一オクターブの高低で、同じドの音をユニゾンで響かせる、最初の音。

音を出す前に、頭の中でまずイメージするのだけれど、私はここで毎回ぞくぞくする。

この曲の初演を聴いた人たちは、一体どんな気がした事だろう。

それはきっと、これから何が始まるんだ、といった一種の驚きだったのではないかと思う。



自分の鳴らした最初の音の響きの反響を、確かめる様にしてから、その音が消えていく寸前に、次の音を、そして又次の音をと、両手でオクターブのユニゾンを連ねていく。


この階段をゆっくりと踏みしめて登っていけば、何かが待ち受けているのだ、といった大きな期待を背負うかの様に、一歩一歩。

それが、少しずつ旋律的な繋がりを持って、引き上げられていく。

でも、行き着いてみれば、解決しない不安定な音のままで、今度は心の奥の悲しみをなぞるようにして、緩やかに下リ始めるのだ。

一瞬の休みの後に、初めて姿を現したハーモニーも、行く先を探し求める様にして漂い、やっと姿を現した主要メロディーにいざなわれて、ようやく主和音にたどり着く。

此処までが、序奏。


弾いている方は、主和音に落ち着いた瞬間、心底ほっとする。

でも、曲はそこから始まっていくのだ。

演奏しながら、もう既にここで曲の魅力に取りつかれてしまっているので、後は自制心を持って曲を進行させていくだけである。

技術的に至難な場所が随所に現れるので、曲に溺れている場合じゃないのだけれど、だからといって普段の練習の成果をご披露したところで仕方がない。

ショパンが先導してくれる曲の流れ、ハーモニーの変化や旋律の意外性に、弾きながら毎回新鮮に感動していなければ、それは演奏とは言えないだろう。


そして演奏とは、自分一人で感動するのではなくて、その感動を制御しながら、聴いてくださっている人たちと共感し合える場を築いていく、ということでもあるのだ。



他人事ながら、難しそうでしょ。

そうなのです、とても難しいのです。



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白髪パワーもね・・

シシーマニアさん

喜美さん、コメントありがとうございました。

自分でも、迷っているのです。
「パワーを全開!」といった演奏を、いくつまで続けてよいのかと・・。

先日、ラヴェルを弾いた時は、自分もやはり年齢を重ねてきたのかな、という気持ちの変化がありましたけれど。

でも、聴いてみたいと言って下さって光栄です。

2016/02/16 13:40:54

素敵ね

喜美さん

本番の貴女を見て聞きたいわ
梅村和世さんのバラード今聞きました
貴女の演奏のように貴女を想像しながら。

2016/02/16 12:26:58

シニアには、向いていますね

シシーマニアさん

師匠。

まさにおっしゃる通りです。


生意気ですが、それが演奏の神髄だと思っています。
ステージの上で、如何に感動しながら弾いていけるか、本番の難しさはそこにかかっています。
そして勿論、そこがライブの楽しさでもあります。

自制心が効かなくてはみ出すこともありますし、全然気が乗らないこともありますし、様々な状況を想定しながら、準備を進めていきます。

時間も手間もかかる作業ですが、うがった見方をすれば、暇なシニアにはピッタリでもあります。

2016/02/15 22:06:57

老婆のパワーっを炸裂させました。

シシーマニアさん

Reiさんのコメントから、いつもこの曲に対する思いが伝わってきます。

素晴らしい曲ですし、今はタイムリーだから、聴いて下さった方々も最後までシーンと静まり返ってました。
こんな白髪のシニアが弾いたからも、あるかもしれませんね。

2016/02/15 21:52:47

曲の感動を、まだ引きずっているのです

シシーマニアさん

彩さん、コメントありがとうございます。

コンサートは、この週末に終了したのですが、曲に対する感動がまだ尾を引いているのです。

この様な曲を弾いた後は、どうしても余韻が残ります。
まあ、この曲に限ったことではありませんけれど。
言ってみれば本番の妙味、なのかも知れませんね。

2016/02/15 21:48:17

なるほど

パトラッシュさん

> 弾きながら毎回新鮮に感動していなければ、
> それは演奏とは言えない

この文の眼目は、ここですね。
演奏者の気概というものが、よくわかりました。

2016/02/15 20:58:34

もちろん

Reiさん

大好きな曲です。
この曲の素晴らしさをこんな風に言葉で表現できるのは、やはり演奏できる方だからですね。

時に切なく、時に力強く…
本当に魅力的な曲ですね。
シシーさんは、どんな風に演奏されるのでしょう…
想像するだけでもワクワクします。

2016/02/15 19:05:24

難しいお話し

彩々さん

でも、最後でシシーさんらしくて
笑っちゃいました!

ミニ・コンサート、体調も整えて頑張ってくださいね。

2016/02/15 16:48:02

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