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パトラッシュが駆ける!

タイトルが決まらない 

2016年01月09日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

「ちょっと寄りました」
ということにした。
「これから国会前に行き、デモに加わります」
そのついでの、表敬訪問ということにした。
去年のことである。
夏の盛りであった。

九段下から国会議事堂へは、皇居を挟んで、ちょうど反対側になる。
時計の針と逆に、十二時から六時に、回るようなものだ。
お濠端を歩き、三十分もあれば着くだろう。

「そうですか。それはご苦労様です」
社長は頷いて、四方山話になった。
「私も、近日中に行きます」とも言った。
デモへである。
安保法制解釈変更の、国会審議が山場を迎えていた時だ。
それに反対するデモが、連日のように、国会前で行われていた。
社長も反対の一人のようだ。
「安倍政治は危険きわまりない」
「まるで、戦前に回帰しているようです」
二人して、悲憤慷慨をあらわにした。

頃合いを見て、S社を辞した。
社長の元気な顔を見れば、それで十分だ。
まだ、川を渡ると決めたわけではない。
その日は、瀬踏みのつもりで、訪れたのであった。

しかし社長の目は節穴でない。
長く出版社を、経営して来た者にとって、
訪問客の心中を推量するくらい、朝飯前であったに相違ない。
後日に来たメールには、次のように書かれてあった。

「私は今、気骨が折れる仕事(ガチガチの学術書)を
やっと終えて、一休みしているところです。
その反動からか、次は“気骨折“でなく、
できれば楽しい仕事を、やりたいものだと思っております。
第三冊目のエッセイを、お出しになりませんか」

私は、自分から言い出すべきを、相手に言わせるよう、仕向けたようなものだ。
思いを寄せる女性に、その思いを告げられない、惰弱男のようなものだ。

言い訳ならある。
心がまだ、定まっていなかった。
三度目の出版を、やりたいことはやりたい。
しかし、踏ん切りがつかないでいた。
誰かに、背中を押してもらいたい。
それが出版社の社長なら、申し分がない。
それで、何食わぬ顔で、S社を訪ねたのであった。

「もう一冊、本を出したいという気持は、正直あります」
返信メールを書いた。
「一冊目、二冊目の際は、それぞれ出版したいという、
明確な希望がありました。
しかし今は、何が何でもという、気にはなれないのです」
偽らざるところを書いた。
さらに書いた。
「まず第一に、書名が浮かびません」

作品の蓄積は、十分にある。
それを本にまとめるについて、書名が決まらない。
それで困っている。
ということを書いた。

出版するとすれば、前著と同じ趣向の、エッセイ集になるだろう。
前著のタイトルが「西荻窪閑居堂金物店」であり、
私は、この名が気に入っていた。
地名が入り、金物店が入ったところである。
しかし、今はもう、金物屋は廃業してしまっている。

「あなたの文章群は、食事、旅、わが街、友人、囲碁、
歌舞伎、デモなど多岐に分かれています」
社長から、さらにメールが来た。
インターネットに発表した、私の作品を、逐一読んでくれているようだ。

「オーソンウエルズの映画『市民ケーン』で、
主人公の新聞王ケーンの人柄を訊ねて、
かつて面識あった人々を取材する度に、
それぞれ異なった主人公の、一面が現れていくのに似て、
あなたの文章にもそれぞれお人柄の展開があって、
そこが面白いと思っています」

恐れ多くも、私の雑食性を、多面性として捉え、あまつさえ、
新聞王ケーンに擬えて下さっている。
そこには、出版業者としての“よいしょ”もあるだろう。
客を励ましこそすれ、その足を引っ張るようなことは、
口が裂けても言えまい。
それにしてもケーンとは、えらい人を持ち出したものだ。
そうまで言われ、引き下がるわけには、いかないではないか。

出版する気はある。
しかし、書名が決まらない。
これに困っている。

「閑居堂忙中記」
「閑居堂多忙日誌」
「忙中閑居堂」
「閑居堂走る」
社長は、幾つかのサンプルを示してくれた。
なるほど、金物店は外してある。
しかしながら、いずれもインパクトに欠ける。
地名が入らない、そのせいかもしれない。
印象が今一つ、か弱いような気がする。

それで、決めかねている。
書名さえ決まれば、あとは一瀉千里・・・
と思いつつ、さながらスタート前に、履く靴が見つからない、
ランナーのような気分でいる。

「ついでに寄りました」
今度S社に行く時は、もうこの手は使えない。
「決めました」
不退転の決意で、行かなければならない。



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歌舞伎らしい

パトラッシュさん

SOYOKAZEさん、
そちらは、決まりましたか。
うん、悪くないですね。

作品の命名は、作者が最もふさわしいです。
何しろ、生みの親ですから。

そこへ行くと、書名は少し違います。
販売戦略(と言っても、売れはしないけど)も絡んで来ますから。
まあ、最後は作者の一存になるのでしょうけれど、
客観的な意見も、聞いてみたくなった次第です。

2016/01/12 14:58:25

うまく走れるか・・・

パトラッシュさん

喜美さん、
コメントを見逃しておりました。
「走る」ですね。
考えてみます。

2016/01/12 14:51:19

私は

さん

パトラッシュ師匠、おはようございます。

「花暦縁家紋」(はなごよみ えにしの かもん)にしようと思っています。
お花見〜家紋の謎〜父娘の縁と夫婦への縁
そんな展開なので。

五文字に納まったし、如何でしょう?
今日は国立劇場の仕掛けの見取り図もお気に入りに入れました。
ブログにも書きますが、明後日から、本格的に執筆です。

2016/01/10 08:16:16

大変ですね

喜美さん

私は素人で何もわかりません
場所も入れたければ
  
 荻窪閑居堂走る 当たり前の名前過ぎましたかね

2016/01/10 07:56:39

代案

吾喰楽さん

字数が問題なら、「西荻窪閑居堂碁会所」では如何でしょうか。
少しイメージは、変わりますが。

2016/01/09 21:06:50

今回は得意技も不発です

パトラッシュさん

シシーマニアさん、
意表をついて、上手く決まると良いのですがね・・・
失敗すると、名前だけが、浮いてしまいそうで・・・

前著、「閑居堂金物店」は、吾ながら、上手く行ったと思っております。
柳の下に、二匹目の泥鰌は、なかなかいないものです。

2016/01/09 20:45:19

お互い

パトラッシュさん

SOYOKAZEさん、
題名には、苦労しますね。
これがすんなり決まる時は、本文だって、快調に進んでいるはずです。
人のは気楽だけど、いざ自分のこととなると、真剣に悩んでおります。
私の場合、これが決まらないと、前に進めないので・・・

閑居堂は、雅号ではなく、金物店の店名です。
実在ではなく、ちょっとふざけたまでです。

2016/01/09 20:41:16

「閑居堂・ちょっと寄りました」

パトラッシュさん

彩々さん、
意表を突かれましたが、↑も悪くないですね。
彩々さんは、才々さん。
そのセンスは、なかなかのものがあります。

2016/01/09 20:35:52

西荻窪閑居堂囲碁サロン

パトラッシュさん

吾喰楽さん、
実は私も、この案は考えておりました。
但し、11文字になるのが、玉にキズです。
表紙はともかく、背表紙がどうなるか・・・
デザイナーと相談すれば、なんとかなるかとは思うのですがね。

2016/01/09 20:29:43

何か、意表をつかれては・・。

シシーマニアさん

水村美苗さん流の命名も良いですね。

「本格小説」「続明暗」など等。
彼女は帰国子女だから、ちょっと感覚が違うのかもしれませんが、意表をついていますよね。
意表をつく方向が、師匠とはまるで違うと思いますけど、皆が及び腰になりそうなタイトルをあえて選択するというのは、意表を突くにも程がある、といった痛快さを感じます。

江戸っ子の師匠だから、方向性は全く違うでしょうけれど、意表を突くのは得意技で特技の様に思われます。

「西荻窪閑居堂金物店」も、勿論本のタイトルとして、意表をついていますから・・。

2016/01/09 17:47:13

題名は難しいです

さん

パトラッシュ師匠、こんにちは。

新しいエッセイ集の出版、嬉しいですね!
題名を決めるのは難しいです。
スパッと決まる時もありますが、概ね悩みます。
内容はホームページのように多岐に渡りますか?
それが一本なら、テーマから考えればよいのですが、日々の暮らしの中で感じたことを書き記すとなると、難しいです。

閑居堂は師匠の雅号ですか?
至らぬ弟子は「風に吹かれて遍路道」しか拝読しておりません。

私には、とても閑居というイメージでなく、好奇心旺盛で、行動的、神出鬼没のイメージなのですが。
「閑居堂東奔西走」「閑居なんかしちゃおられん」
興味を感じれば、何処へでも出かけ、酒や古典芸能を楽しみ、書に学び、世を憂うだけでなく、行動する。
そして、子供達にはよき碁や将棋の師匠でもある。
そんな師匠にぴったりの題名が見つかるとよいですね!

2016/01/09 11:58:46

いや〜(#^.^#)

彩々さん

またまた、面白いことになりそうですね。
なんの役にも立たない弟子の端くれの私メが
ワクワクしても、しょうがないのですが…
Waku Waku! Y(^-^)Y


「閑居堂走る」もいいような…

書き出しにある「ちょっと寄りました」って、
この言葉、好奇心旺盛なパトさんからよく出てくる
言葉な気がします。
私、これ好きです。
こんな本のタイトルも、有りな気がしますが(!?)

「「閑居堂・ちょっと寄りました」も、いいなぁ。

って、無責任なこと言ってますが(笑)

2016/01/09 11:23:03

訂正

吾喰楽さん

ミニ → mini

2016/01/09 11:14:36

ご提案

吾喰楽さん

社長さんの案だと、「閑居堂走る」に一票です。
でも、仰せの通り、インパクトに欠けます。
いっそのこと、「西荻窪閑居堂ミニ囲碁サロン」では如何でしょうか?
長すぎるのなら、ミニを取っても良いです。

2016/01/09 11:11:36

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