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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空〜(十六)ラベルにハートマークがあり 

2015年08月18日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



慌てて彼は、女のグラスにウィスキーを注いだ。
ラベルにハートマークがありその中に何やら描かれているが、何を示しているのか彼には皆目分からない。
しげしげと見つめる彼だった。

「おっぱいだよ、あたいの。あんたもスケベだね、男なんだ」
「ああ、おっぱいか、なるほど」
彼からボトルをひったくると、
「マスターがくれたんだよ。誕生日プレゼントだって。
あたいのお父ちゃんなんだよ、マスターは」
と、胸に抱え込んだ。

「あんたねえ。男と女の間に、何があるのよ。
セックスでしょうが。あんた、嫌いかっ! おかまちゃんならいざ知らず、さあ」

グラスを一気に飲み干すと、大きくため息をついた。
カウンターに突っ伏しながら、また早口でまくし立て始めた。

「おかしいんだよ、あいつ。あたいをテーブルに呼ばないんだ。
あの店はね、お気に入りのダンサーを呼べるんだ。
そしたら、チップが出るんだよ。
あたいなんか、引く手あたまさ。違った、あ、ま、た、だ。引く手あまただよね? 

ホントとだよ。毎晩、十人はくだらないんだから。
そんなあたいがだよ、あいつに…。
バカにしてんだよ、あいつ。

あいつの横まで行って、あたいのおっぱいを見せて やってるのに、あいつ下なんか向いちゃって。
顔を真っ赤にしてんの。
純情なんだね、あいつ。

おいっ、水! 喉がカラカラだ。
お前! あたいを酔わせて、どうする気だい。
抱きたいのか、あたいを。
おっぱいを吸いたいか? だったら、水だよ。
お水、頂戴よお」

彼はマスターに、水を! と、目で合図した。
「済みませんねえ、お客さん。こうなっちゃうと、どうしょうもできないんです。今夜のお代は結構ですんで」
と、平身低頭で水を差し出した。

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