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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空〜(十六)場違いだなんて 

2015年08月12日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



「お兄さん。常連さんも、初めは皆さん一見さんですから。場違いだなんて、思わないで下さいよ」
彼の心を見透かしたような言葉に、彼は安心感を抱いた。
「ビール、下さい」
「ありがとうございます。内は、ごらんの通り女性が居ませんので、物足りないでしょう。
でもその分、リーズナブルな値段ですから。
それに、朝方の四時迄営業していますから、コンパの後なんかにでも寄ってくださいな」
五十代だと思われるバーテンは、この道三十年だと言う。
この店も彼是二十年近くになったと、ボヤキながらも自慢げではあった。

「はあ…」
気の無い返事を繰り返す彼に対し、
「ごゆっくりしてください」と、奥のグループの元に戻って行った。
“吉田君が好みそうな、店かもしれんな。今度誘ってみようか”
一人で入った事に後悔しつつも、コップを空にした。

突然、レコードの針が飛んだらしく、堂々巡りを始めた。
慌ててバーテンが、レコード盤を変えた。
聞き覚えのある曲が、流れてきた。
♪you be so…♪
曲名は分からないが、好きな楽曲の一つだった。

声を掛けた訳でもないのに、真新しいビールが差し出された。
“少しは、気に掛けてくれてるんだ。”
まるで無視されているわけでもないことに、彼は安心感を感じた。
“うん、吉田君を誘ってみよう”

「ハアーイ! 来ましたよ〜ん、今夜もお」

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