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パトラッシュが駆ける!

箱根 今でしょ 

2015年05月22日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

大きな露天風呂がある。
それを中心に、さながら衛星のように、寝湯があり、
打たせ湯があり、泡湯がある。
その何処にも、客の姿がない。
洗い場も、ひっそりと静まりかえっている。
男湯の全域を、私が一人で、占有していることになる。

20分ほど経って、やっと一人、裸身が現れた。
続いて、また一人。
桶の音が響き、ようやく温泉らしい風景になった。
これを貧乏性というのだろう、森閑とした湯に、
たった一人で居るのも、妙に落ち着かないものだ。

「地震があったでしょ」
浴衣を着て、ロビーに出たら、妻が開口一番に言った。
「知らないね」
「暢気ねえ。ずんと来たのに」
それからフロントの従業員に向かい、話しかけている。
「さっき、地震があったわよね」
「ええ、ありました」
それ見なさい、あなたが鈍感なのよ、と言わんばかりに、
私の顔を見る。

「さあ、飯だ」
私は、先に立って歩き出した。
私達はこれから、ホテルの本館に赴き、ランチバイキングを食べることになっている。

たっぷり湯に漬かった後だ。
ビールが美味いだろう。
しかし用心せねばならない。
バイキングは油断すると、つい食べ過ぎる。
私は貧乏性だ。
卑しい性格だ。
安くない代金を払ったからには、食べなきゃ損だという頭がある。

 * * *

大涌谷で、噴気が異常に上がっている。
地震も増えているそうだ。
その様子が、繰り返しテレビで放映される。
立ち入り禁止区域以外は、取り立てて危険はないというのに、
箱根の山全体が、危ういという印象になる。
観光客が減る。
箱根が寂れる。
これを風評被害と言うのだそうだ。
箱根町の町長が、テレビカメラに向かい、それが困るのですと、
しきりに訴えていた。

ならば、行ってやろうか・・・
困っている人を見たら、助けてやらねばならない。
一抹の義侠心も、ないことはなかった。
でも、本当のことを言えば、少し違う。
箱根に来たわけというのが、実は、ここでも貧乏性だ。

「小田急電鉄の株主優待券があるの、使わない?」
妻の友人の、K子さんが言ったそうだ。
私も妻も、こう言う話が好きだ。
ただのものなら、とりあえず貰っておく。
使い道は、それから考えればいい。
万一使わなかったら、捨てればいい。

そう思いつつ、しかし、いざとなると、捨てられない。
僅かでも価値あるものを、無駄にしてよいのか・・・ということになる。
何時ぞやも、チケットをもらった。
その名を聞いたことのない、女性歌手のリサイタルであった。
気が進まなかったが、行った。
そうして少し後悔したことがある。

今回は、鉄道切符である。
その使用可能な、最遠の駅が、箱根湯本であった。
しかも、その有効期限が迫っている。

あいにくと、忙しい時期だ。
雑事が入り組んでいて、一泊の予定さえ組めない。
それでも切符がもったいなくて、私達は日帰りで、箱根にやって来た。
実にもう、本末転倒なのだ。
実にもう、箱根に対する、愛情というものがない。

 * * *

風評の影響は、やはりある。
帰りのロマンスカーも、空いていた。
それを言えば、バイキングの会場だって、空いていた。
広い会場が、半分ほどしか、客で埋まっていない。
だから、閑散としている。
料理も、常に余っている。
不思議なものだ。
人だかりがしていると、つい、先を争う。
人が居なければ、ファイトも湧かない。
泰然と構え、料理も心行くまで、玩味することが出来る。
そのせいだろう。
今回のバイキングにおいて、私は珍しく、食べ過ぎなかった。

休憩室も空いていた。
大の字に寝転び、食後の午睡を、心行くまでやった。
途中で二度ほど、ずんと来た。
東京辺りの地震と少し違う。
単発で終ってしまう。
これが何を意味するのか、私にはわからない。

後で妻に言ったら、気付かなかったという。
それ見ろ、自分だって、抜けている時がある。
地震に気付いたくらいで、鬼の首を取ったように、喜んではいけない。

私達は、何が何でも、箱根に来たかったわけではない。
しかし、来てみれば、箱根はやはり、山紫水明の地だ。
新緑の山を眺めながらの湯浴みの、悪かろうはずがない。
しかも空いている。
箱根の山に、静けさを求めるなら、客の少ない今が好機だ。

但し、私がまた来るかと言えば、それはわからない。
箱根を、心から愛しているわけではない。
誰かが、東武鉄道の切符をくれたら、私はさっさと、
鬼怒川温泉に行くだろう。



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勇気の問題で

パトラッシュさん

シシーマニアさん、
箱根も上の方に行けば、富士山がたっぷりと見えるのですが、
私が行ったのは、あいにくと谷底のような、湯本というところでして、
ただ山があり、川があり、温泉があるというだけのところでした。
それでも、客が少なかったです。
上の方は、さらに・・・と思われます。

「人の行く裏に道あり花の山」とも言います。
今、芦ノ湖湖畔に行けば、静かに富士山を、満喫できるかもしれません。
ほんの少々、勇気が要りますけど・・・

2015/05/23 14:54:16

富士山がみえましたか・・。

シシーマニアさん

風評被害で人が来ないのですね。
近ければ、是非行きたいものです。

私は温泉には興味がありませんので、箱根そのものへの執着は強くはありませんが、そこから富士山は見えるかしら・・。

富士山は毎日でも見たいです。新幹線やロマンスカーは勿論ですが、都内の中央線、西武池袋線など、建物の隙間から富士山の見える場所を覚えていて、運よく見えると得した気分を味わいます。
お天気の良い日でも、富士山はそこだけ雲を被っている事も多いのですよね。安売りしないところも、霊峰富士たる所以でしょうか・・。

2015/05/23 07:59:33

火山

パトラッシュさん

Reiさん、
そうです、義侠心です。
なんたって、無料の交通費の、五倍くらいの散財をして来ましたから。

箱根の観光産業への、義理は果たしました。

後は野となれ、火山となれ・・・
なんて言うと、怒られそうですが・・・

2015/05/23 07:16:44

健啖

パトラッシュさん

喜美さん、
京急でしたね。
無料券は、遠くまで乗った方がお得。
横浜まででは、もったいないですね。(笑)
品川あたりまで、いかがでしょうか?

バイキングは好きです。
しかし、つい食べ過ぎてしまうのが、玉にキズ。
そうちょくちょくは、行きません。

喜美さんは、スマートだから、心配ないですね。
「食」は、命の源、健康のバロメーター、どしどし召し上がって下さい。

2015/05/23 07:08:23

危険度

パトラッシュさん

風香さん、
テレビで見ると、日に日に噴気が増しているようです。
このまま終息するとは、思えないのですがね・・・
先へ行けば行くほど、危険度は増すのではないかと思われます。
無料券もないことだし、私は当分行きません。

2015/05/23 06:54:37

火山

パトラッシュさん

SOYOKAZEさん、
ロマンスカーはいいですね。
途中駅で、各駅停車の電車を、次々に追い越して・・・
この優越感が、特急料金なのですね。

箱根火山の蠢動が気になります。
ここまで来ると、一噴きないと、納まらないかも・・・
何やら、火山も人間に似ていなくもないなと・・・

2015/05/23 06:51:06

割引券

Reiさん

師匠が無料の券によわいように、私は割引券に弱いです。
「\'2,000以上買えば200円引き!」につられて無理に\'2,000以上買ったりします…本当は、それ以下で済んでいたのに。
損しているのか、得しているのか…(^_^;)

結局、商業主義に踊らされているんですね。

あ、いえ、師匠の場合は義侠心ですよね!?

2015/05/22 22:35:54

バイキング

喜美さん

箱根は好きですけれど今は
余り足が向きません
バイキングもパトさんだったらいいわよ
此の歳の私も欲張り バイキングの珍しいものは食べないと損した気分
体のことも何も考えずに黙々と食べちゃいます
株券私は此処の京急ですから今までは良く使いましたけれど
一人になると娘達は婿さんがそこに
勤めていますから限りなく使える定期
があるし残りそうになります
お蔭で好きなデパート見て
好きなもの買って美味しいもの食べて
ニコニコして戻ります

2015/05/22 13:11:53

怖くなかったですか?

さん

日に日に レベルアップしてますけど。。

師匠は判官びいきの精神でしょうか^^

2015/05/22 12:42:21

箱根

さん

私の実家は小田急線沿線だったので、ロマンスカーは毎日のように見ました。
従って、箱根、江の島は親しみのある地です。

夫と、最後の旅行をしたのも箱根。
大涌谷の黒卵を食べたのに、あっけなく逝ってしまいましたが。

地震は縦揺れですね。
何となく嫌な予感がします。
温泉は火山の恩恵ですが、地震も噴火も付きまといます。

湯本辺りなら、遠いから問題ないと思いますが、大涌谷周辺は、やはりちょっと怖いですね。

でも、空いている今、ふらりと出かけるのも悪くないかもしれません。

2015/05/22 10:52:34

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