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パトラッシュが駆ける!

臭う 

2015年05月08日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

「このくそ暑いのに・・・」
この一言が、発端であった。
女が「くそ」なんて罵りを、自身のブログとは言え、使うだろうか。

「くそったれ」「くそジジイ」「くそ面白くもない」・・・
いずれも、良識ある女性の口からは、容易に発せられる言葉ではない。
「くそまじめ」
これならわかる。
褒め言葉と組み合わせれば、くそだって、立派に生きる。
深窓の佳人はともかく、一般の女性なら使う。

もしかしたら、この人、男ではないのか。
それからというもの、そのブログが気になって仕方ない。
プロフィールを見れば、紛れもなく「女性」と書いてある。
名前もまた、いかにもそれらしく、雅な響きさえある。

無理をしている。
その文は、女を装うために、しきりに取り繕っている。
しかし、行間に漂う、男の臭いは消し難い。

男は、頭で考える。
何かにつけて、理屈っぽくなる。
言わずに居られない、語らずに居られない、そう言うところ出て来る。

私の嗅覚が“彼女”の平仄に、男の体臭を感じている。
偽装は、美しいことではない。
だから「匂う」ではなく「臭う」のである。

 * * *

昔、短い推理小説を書いたことがある。
町内で起きた、ある放火事件を、題材にした。
書いた当時も、今も、事件は未解決である。
建物の焼失だけならともかく、老婦人が一人、死んでいる。

私には、気になる事が、一つあった。
犯人への、かすかな心当たりである。
しかし、憶測の域を出ないものを、警察に知らせてよいものかどうか。
消化不良の腹をかかえたように、気が晴れないでいた。
仕方ない。
小説に仕立てることを思い付いた。
そうすれば、この鬱懐が晴れるかと思った。

近所の事件でもあり、ありのままには書けない。
登場人物の、職業、年齢、家族構成など、全てを虚構に作り上げた。
さらに、工夫を凝らした。
子供の目で、この事件を見たら、どうなるか・・・
と言う設定に持って行った。
私の娘は当時、中学生だった。
これを一人称にして語らせ、その概念に固まらない目で、
事件に向き合ってもらうことにした。

物語は、おおむね順調に進展したが、ただ一つ、苦労したのが、女子の言葉使いであった。
女の子らしく・・・と書けば書くほど、不自然になる。
特に終助詞がむずかしい。
語尾に付ける「わ」とか「よ」である。
これを多用すると、かえってわざとらしくなる。

犯人に辿り着いて、その小説は終わった。
早速、皆さんにお見せしたが、私の友人知人は、
誰もが褒貶を言わず、ただ曖昧に、笑うだけであった。
結局、その作品は、私の最初にして、最後の推理小説となった。

そんな経験もあり、私は、男が女に成りすます苦労を、
少しは知っている。
特に、女言葉の使い方に関して。
服装や化粧で、女を装うことも、簡単ではなかろうが、文章、
つまり言葉をもって女を演じるのだって、簡単そうで、実は難しい。
ということを、私は知っている。
自慢ではないが・・・と言いたいが、結局自慢になっている。
 
* * *

「自分史を書くと何かいいことがあるのでしょうか?
また、何から始めたら良いのでしょうか?」
こんな書き込みがあった。
あるSNSの、相談室である。
相談者はどうやら、自分史を作りたいらしい。

「おやめなさいよ、自分史なんて。労多くして得られるのは、
ひと時の自己満足のみです」
お節介な私は、回答欄に書き込んでやった。
そうしたらどうだ。
脇から、横槍を入れて来たやつが居る。

「あなたは、固定観念に囚われています。価値観は人それぞれ。
決め付けるのはおかしい」
相談者をそっちのけで、私への非難に終始している。
さながら、私への意趣でも晴らすかのように。
しかも匿名で。

卑怯なやつめ・・・
「数々の事例を見て来た経験から、私見を述べたまでです」
私が反論したのは、言うまでもない。
「匿名とは、潔くありません」
これももちろん、言ってやった。

それきりである。
論争に発展することもなく、一ラウンドでその応酬は終了した。
それだけのことである。
しかし、突然のその闖入者が、妙に頭に残っている。
匿名で人を攻撃し、しかし反論された途端に、口をつぐむ。
男なら、そう言うことをやらないはずだ。

気になるのは、その文だ。
ここでも、行間に臭うものがある。
助詞の用い方、送り仮名、句読点、言葉の使い回しなど、
仔細に見れば、さながら声紋のように、文は、その記した人を語る。

そうすると、浮かんで見えるものがある。
少々気の強い、それでいて、徹底して争うほどの気概もなく、
いざとなれば、女であることや、高齢や病弱を遁辞に、
さっさと蛸壷へ逃げ込む、そういう人間像というものが。

さして広くはないコミュニティは、さながら、
人口数百人程度の“村”をも思わせる。
ヒマに任せて概観していると、それらしきが浮かんで来る。
この人なら、やりかねないな・・・
というのが居る。
正々堂々と、正面からぶつかって来ればいいのに・・・
むしろ“彼”のために、惜しんでいる。

 * * *

SNSは、現実社会の縮図だ。
雑多な人間が、寄り集まっていて、時に、辟易とさせられる。
女装も匿名攻撃も、それらの一つだ。

一方で「人物」に出会うこともある。
物事を、一心に探究している人などだ。
これは、尊敬にあたいする。
だから、時に失望はしても、愛想尽かしはしないでいる。



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文は人なり

パトラッシュさん

ばばたまさん、
コメントありがとうございます。
ばばたまさんの文は、その絵と同じく、穏当でケレン味がなく、
文法上の間違いも、まったく見られません。
内容には常に、市民感覚にあふれ、読者の共感を得やすいです。
これからも、この簡潔なスタイルを、貫いて下さい。

2015/05/10 12:15:27

深いです。

さん

元ヤンキーなら使うかも知れませんね。
でも他人様のブログ読むのが面白くなって、時々先輩方が文節や句読点の使い方がうんぬん書いてあると、つい自分ではないだろうかとドキドキする、気の弱い女?おばさん、お婆さんなのでした。

2015/05/10 09:30:31

それは支障です

パトラッシュさん

彩々さん、
やめて下さいよ、もう
SOYOさんだけでも困ってるんですから。

それになんですか、末席とは。
今度飲み会をするときは、彩々さんに、床の間を背に、座って頂きますからね。
(何なら、SOYOさんの勤めていた料亭で)(笑)

2015/05/09 07:25:04

観察の場

パトラッシュさん

Yさん、
学ばせて・・・なんて、畏れ多い。
私はただ、私憤を綴っただけですから。

世の中には、いろいろな人がいますね。
私にとって、SNSは、人間観察の場でもあります。

2015/05/09 07:17:25

SNSの星

彩々さん

パトさんは囲碁の先生でもあり、
お酒の種類、飲み方などなど、ご指導
下さる師匠です。

文章、言葉でつながるSNS界にあっては、
まさしく師匠です!

物書き仲間の末席を汚しております
私メ「くそ書き」ですのに、何かと(何だぁ〜?)お世話になり、甘えっぱなしです。
これからは‘パトさん!’などと、気軽に
呼ばず、Soyoさんのように師匠と、尊敬の念を
持って呼ばせていただきますわ。

2015/05/09 05:31:23

面白いです^^

さん

勘違いした正義感の一発屋が
咬ますヨコヤリは
冷やかしの類ですね。
在り来たりな言い回ししか出来ない
方が多いです。
的確な御指摘に学ばせていただきました。

2015/05/08 21:15:59

今まで通りで

パトラッシュさん

喜美さん、
何をおっしゃいますか。
喜美さんは、立派に文を書いています。
それも独特の、味のある文をです。
それも、随所において。
卑下なさることは、何もありません。
語尾の「ね、わ、よ」も、全く問題ありません。
それどころか、これを取ってしまったら、喜美さんらしくなくなります。

私の深読みを、どうぞ気にすることなく、これまで通りの文を、お書きになって下さい。

2015/05/08 19:45:51

問題なし

パトラッシュさん

SOYOKAZEさん、
同じように「このくそ忙しいのに」と言っても、
それが男か女かは、文脈の中で、おのずと明らかになるものです。
ご心配なく、SOYOKAZEさんは、女ですから。

逆に言うと、小説の中では、男くささを出すのが、難しくなります。でもそれは、仕方のないことです。
SOYOKAZE流で、問題ないでしょう。

2015/05/08 19:39:57

喜美さん

情けなくなります 文は人なり
文かけない私人でなし?

くそ婆言われたくないですね
そんなこと言われたら泣きたくなる
私前に言われましたね ね わ よ
其れ使う女って 如何してか語尾に
入ってしまいます

2015/05/08 19:05:55

私は男?女?

さん

パトラッシュ師匠 こんにちは。

私は、作品が佳境に入ったのに、3日連続で、ポストに訃報が入っていた時は「このくそ忙しい時に、なんてこった。たいがいにしてくれよ〜。
いやいや、人様が亡くなったてぇのに、こんなこと、言っちゃならねぇ」なんて、ぶつぶつつぶやきながら、コピーし、配布していました。
師匠なら、おわかりですね、何を書いていたのか。(笑)

ブログを拝見していて、あぁ、私の作品は女の視点で書かれていた。
言葉こそ、書き分けたが、テーマと言うか、感覚はやっぱり女性だ。
そんな風に思いましたが、冒頭に挙げた、暴言も吐きます。(汗)

2015/05/08 17:59:43

落語なら・・・

パトラッシュさん

吾喰楽さん、
その通りです。
偽ることに費やすエネルギーを、他のことに使ったら、人生がずっと、豊かになるはずなのですがね・・・
世の中には、哀れな人も居るものです。

「くそ味噌」は、落語のネタにはお誂え向きながら、
会社の公文書には、不向きでしょうね。
物事を端的に表して、いい言葉なんですがね・・・

2015/05/08 15:24:38

大目に見ましょう

パトラッシュさん

Reiさん、
ネット上の「おかま」、これを「ネカマ」と称するそうで、何処のコミュニティにも、存在するようです。
そんなことをして、何が楽しいのかと、私のような人間は思うのですが、これが後を絶たないところを見ると、何かあるのでしょうね、きっと。
現実社会にだって、女装する男は居るわけでして・・・

私の推理小説は、既に断捨離しました。
後世に残すようなものでは、ありませんでしたので。
Reiさんこそ、お若いのですから、何か書いて下さい。
「パッチワーク殺人事件」と題して。
犯人に至る秘密が、パッチワークの中に込められていた・・・
なんて、ちょっと面白いと思うのですが。

まあいいでしょう。
このところのReiさんは、何かとご多忙のようなので、
「くそ忙しい」くらいは。

2015/05/08 15:16:32

文は人なり

パトラッシュさん

シシーマニアさん、
「男は頭で考え、女は子宮で考える」
なんてことが、言われます。
「男は理屈、女は情緒」とも言い換えられます。
その辺の違いは、面白いですね。

そんなところから、ブログを眺め渡しています。
文章から人を想像する、これが結構楽しいのです。

2015/05/08 15:04:57

私には

吾喰楽さん

こんにちは。

性別は勿論のこと、職業、年齢、家族構成などを偽るのは、大変な労力を必要とします。
それでも、ボロが出ます。
私には、出来ません。
地で行くのが、楽でいいですよ。

若いころ、業務報告書に「くそ味噌」と書いて、上司に注意されたことを、思い出しました。
「くそ暑い」や「くそジジイ」と同様、何気なく使っていました。

2015/05/08 13:24:13

師匠へ

Reiさん

私も見たことがあります。
性別や年齢を偽って、SNSに投稿していた人を…
その人は「どうせ、この世界はウソばかりなんだから」と言いました。
私は、そういう考え方にはどうしてもついていけません…(>_<)
師匠、そういう人には、喝!を入れてください。

一度読んでみたかったですね…師匠の推理小説!
女子中学生が主人公なんて、興味津々です。

それから、私は「このくそ忙しい時に!」などという言葉は、日常的に使っていますが…(^_^;)

2015/05/08 12:45:18

疑ってみる面白さですね・・。

シシーマニアさん

文章を読んで、その人となりを想像するのは無意識に行っていると思いますが、性別はのっけから疑ったことはありませんでした。
固定観念にとらわれていました・・。

文章そのものというより、思考の男女差ですね。目からうろこ でした。

2015/05/08 10:29:19

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