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敏洋’s 昭和の恋物語り
長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空・第一部〜 (十二) どういったお店ですかな?
2015年05月06日
テーマ:テーマ無し
「ううん、行かなかった。その代わりに、」
由香里は声を潜めて、母親に話し始めた。
彼としては信頼を裏切るような行為はしていないつもりだが、大観覧車での事だけは話して欲しくなかった。
父親もまた、由香里の話が気になり始めた。
といって、その会話に入るきっかけがつかめずにいた。
「そうですか、夜の誘いですか。どういったお店ですかな?」
「何という店だったか。クラブ、そうだ。ミニクラブ・チェリー、とか言う店だったと思います。
二回いや三回だったか。そんな程度です、はい」
「ほう。クラブですか…」
父親には、意外なことだった。居酒屋あたりだろうと想像していた父親は、
「それは、それは。係長さん、案外本気だったかもしれませんな。しかし、先生ならばモテたでしょう」
と、感嘆の声を上げた。
「いえいえ、とんでもないです。刺身のつまみたいなものでした。
からかわれてばかり、でした。僕みたいな、貧乏学生が行くような場所ではないですから」
「ハハハ、まあ社会勉強ですな。。ところでどうです、先生。
私の会社に、一度来ませんか。それで、もしよろしければ考えてみませんか。
一応、上場している会社ですが。」
「お父さん。絶対、先生を入社させてよ。そしたら、私も入るから。ねっ、そうしてよ。ねっ、ねっ」
由香里が、食卓から父親の元に駆け寄ってきた。
そして父親の首に手を回し、頬ずりしてきた。
途端に、父親の顔が柔和になった。
「由香里ちゃん、だめでしょ。こちらに、いらっしゃい。続きを聞かせてちょうだい」
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