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「そして、父になる」の音楽 

2015年04月11日 ナビトモブログ記事
テーマ:音楽

私がピアノを始めてから、今日までの60数年間。

言ってみれば、人生の傍らには、いつもピアノの音色があった。

ピアノという楽器は本来独奏楽器だから、楽器と向かい合っているその長い時間は、基本的には「一人ぼっちの作業」という事になる。

まあ、うがった言い方をすれば、ピアノを弾いている時間は常に作曲家と対話している様なものだから、別に孤独感にさいなまれている訳では無いのだけれど・・。


でも例えば、買い物をしている時など、何気ない場所で、突然ピアノ以外の音が聞こえてきたりすると、何故かとても懐かしい気持ちになってくるのだ

予想外の場所で、ヴァイオリンや管楽器の曲を聞いて懐かしくなるのは、きっとそれらの響きが、学生時代の様々な友人達との合奏の思い出に繋がっているからなのだろう。


今日スーパーで聴こえてきた、バッハのヴァイオリン曲。

あれは誰の演奏だったのだろう・・・。

樫本大進、的な演奏だったなあ・・。

弦楽器はピアノとは違い、その弓の使い方によって、息遣いの様なものまで伝わってくるから、響きがどことなく生々しい。

それはまるで、耳元で囁かれている様なバッハだった。


バッハといえば、「そして父になる」という映画。

そこで聴こえてくるBGMは、殆どピアノソロで、その使い方が実に素晴しかった。

始めは、ツェルニーが作曲した練習曲の中の一曲。

幼い子供たちがよく弾いている練習曲で、そこから無邪気な世界が浮かび上がってくる。


そして、いよいよ話が本題に入る頃、バッハの「ゴールドベルグ変奏曲」のアリアがゆっくりと聴こえてくる。

主題と33の変奏が続く、あの長大な曲の冒頭が、グレン・グールドの無垢な音で、ゆったりと演奏されるのだ。


不眠症で悩んでいた伯爵の為に書かれたともいわれる、つまり眠気を催す程に延々と続く曲。

グレン・グールドの澄んだ音が、穏やかに聞こえてくる。

際立ってシンプルなテーマから始まるこの至難な曲の先行きが、まさにこれからの話を象徴している様で、万巻胸に迫る、といった気持ちに包まれたのだった。


ニュートラルな筈のピアノの音色が、それもバッハという古典の作品が、これ程にも映画音楽として感動的であったとは・・。


「抑制された表現こそが、感動を与える」という、典型的な手法としても、それは実に見事で効果的な曲の選択であった。



追記:曲名で、ツェルニーの練習曲と書いたのは、どうやらブルグミューラーの練習曲だった様です。



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ピアノの音は。

シシーマニアさん

マリーさん、こんばんは。

コメントありがとうございました。私は、そんなに敏感の方ではありませんが、ピアノの音だけは気づきます。何の曲かな、とか。
逆に、子供たちは赤ん坊の時から聞き続けてきたので、免疫の様になってピアノの音だけはスルーするそうです。

2015/04/16 18:00:04

気づかずに

さん

そして、父になるは私もみましたが、Reiさんと同じく、バックミュージックに気づかず見ていました。

同じ一つの物を見ても見る人の立場によってそれぞれ反応する物が異なりますね。

今は見ませんが、昔よく見た韓ドラにもクラシック音楽が良くバックに流れていました。

2015/04/16 13:25:30

天からの授かりもの?

シシーマニアさん

パトラッシュ師匠、こんばんは。

コメントありがとうございます。
表現には、客観性が必至ということかもしれませんね。
演奏などは、まず自分が感動しなければスタートできませんが、それがえてして自己陶酔に陥ってしまいがちです。
芸術作品は、作るものではなく、天から受け取るものなのかなあ、と思ったりもします。

2015/04/11 20:51:30

日本の風景

シシーマニアさん

吾喰楽さん、こんばんは。

そうでしたか・・。
よく、ジブリ作品が埼玉県で撮影された、等と聞いたりしますけれど。従来の日本の風景がたくさん残っている、という事でしょうか。

2015/04/11 20:46:04

日本映画

シシーマニアさん

Reiさん、こんばんは。

コメントありがとうございました。
映画はやっぱり、当たり前ながらイケメンに魅入ってしまうなあ、と私も見ながら思いました。
あの後、「一つ屋根の下」を、改めて見たぐらいで・・。

でも、最近の日本映画は、感動的な作品が多いですよね。「歩いても、歩いても」は同じ是枝作品ですし、「ディア、ドクター」とか、「おとうと」とか・・。

2015/04/11 20:43:14

「抑制された表現こそが、感動を与える

パトラッシュさん

音楽でも・・・ですか。

心しているつもりですが、ややもすると、跳ね上がり、叫んでしまっております。
(私は文学だけですが)

2015/04/11 11:48:15

川原

吾喰楽さん

おはようございます。

主題から外れますが、悪しからず。
「そして父になる」は、わが町でロケが行われました。
ポスターに使われた川原の集合写真は、荒川です。
それだけの話ですが。

2015/04/11 08:50:10

映画音楽

Reiさん

映画大好きで、「そして、父になる」も観ました。
でも、正直、父親役の福山雅治さんにばかり目が行っていました。

よーく思い出してみて、もう一度調べて、やっとバッハの音楽にたどり着きました。
まさにぴったりの音楽でしたね。

音楽というものは、映画や映像で、より生き生きと印象に残ることがありますね。

2015/04/11 08:44:41

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