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パトラッシュが駆ける!
山上の家(前)
2014年11月01日
テーマ:テーマ無し
海の近くで食べる魚は、美味い。
という説に、科学的根拠はない。
だから、定理ではない。
定説とも言えない。
気分である。
食欲により、誘起させられる、一種の思い込みというよりない。
今時は、冷蔵冷凍設備が普及し、流通網が整備され、
かなりの山奥へも、鮮魚が届けられる。
私は、つい先日も、八ヶ岳山麓の山荘において、
刺身の盛り合わせを食べた。
マグロ、タイ、サーモン、ホタテなど、盛り沢山であり、
決して不味くはなかった。
それでも尚且つ、ほんの少し、違和感があった。
そこは落葉松が鬱蒼と茂る、山の中であった。
刺身はやはり、海の近くで食するのがいい。
かすかにでも、海の匂いがすれば、なおのこといい。
例えばまぐろ。
今は遠洋漁業が主であり、目の前の海で獲れたものではない。
それでも尚且つ、潮風を浴びながら食するそれには、
格別の味がある。
海と共に生きて来た日本人の、血がざわめくからではあるまいか。
食とは、舌ばかりでなく、五官をもって、感じるものだ。
思い込みつつ食べる。
連想しつつ味わう。
だから魚は、どうせなら、海の近くで食べたい。
* * *
「魚を食べに来ませんか?」
海の近くに住むご婦人から、お誘いを頂いた。
インターネット上の、あるコミュニティのお仲間である。
オン歳、八十を越えられていると、伝え聞いている。
その方が、パソコンを達者に操られる。
私の書いたものにも、しばしばコメントをお寄せ下さる。
「それは、よかったわね」
感想を述べるに、口語体であり「です」「ます」はほとんど使われない。
「私だったら、そんなことしないわ」
人生の先輩として、示唆を送ってくれたりもする。
旦那を亡くされ、一人住まいだそうだ。
今時珍しい、回り廊下のある、木造の古い大きな家にだそうだ。
旧家であろう。
私は、自分がコンクリートの家に住んでいることもあり、
そう言う家宅というものが、懐かしくて、叫びたいくらいに好きだ。
「是非行きたいです」
返事を出した。
しかし、一人で行くのも、憚られる。
いくら先輩とは言え、相手は女性だ。
「同志を糾合し、伺いたいと思います」
少し気取って返事を出した。
そうしたら、どうだ。
怒られてしまった。
「糾合なんて、そんな難しい言葉、わかりません。
私みたいな、ばかでも、分かる言葉を使って頂戴」
パンチが返って来た。
もちろん、冗談である。
その女性、Kさんが、ばかどころか、見識豊かにして、
品性優れた方であることを、私はとうに知っている。
そしてそれが、想像以上であることを、私は、間もなく知ることになる。
* * *
私は、若い頃、釣りに凝っていた。
私は、因果な性分であって、何かに熱中し出すと、止まらなくなる。
その時もそうだ。
商売をそっちのけで、遊んでいた。
「仕方のない人ねえ」
私の留守には、妻がぼやきながらも、店を守っていてくれる。
それをいいことに、であった。
遠出は出来ない。
さすがに、自制心というものが、完全に蒸発してしまったわけではない。
となると、東京から近い海は、三浦半島だ。
車を飛ばせば、二時間ほどで着く。
随所に磯がある。
船宿もある。
ボートを借り、沖に漕ぎ出し・・・なんていう手もある。
釣りが高じて、今度は、セカンドハウスを持ちたくなった。
前夜、店を早じまいして出発し、別荘で一杯やり、そして寝る。
翌日は、夜明けと共に釣り場に出かける。
釣った魚を肴に、また一杯やる。
それは、格別な贅沢のように思われた。
横須賀市長井・・・
その地名まで覚えている。
不動産屋が、推奨する物件は、海に近い、丘の上にあった。
周囲には、大根畑が広がっている。
その長閑な地を、何度か見に行った。
妻を連れて行ったこともある。
かき集めれば、お金も何とかなった。
しかし、踏ん切りがつかなかった。
何でだか、わからない。
いざとなると、私は意気地がない。
しかし、結果的には、その優柔不断が、幸いしたことになる。
バブル崩壊後の、地価の値下がりは、目を覆うばかりだ。
建物を建てていたら、維持費もかかっただろう。
私は、大変なお荷物を、背負うところであった。
やがて釣りを止めた。
釣竿など、道具は残っているが、倉庫で埃をかぶっている。
数年前には、車も処分してしまった。
三浦半島は、過去の地になった。
もう訪れることも、ないと思っていた。
* * *
その私が、京浜急行の電車に乗っている。
懐かしい、横須賀を目指している。
海は見えない。
電車は終始、小高い山の間を、縫うように走っている。
車窓から、海を見たい人は、伊豆半島や房総半島に行くがいい。
伊豆急の踊り子号なんか、山と海の境、ぎりぎりを走り、
強風が吹いたら、海に落ちはしないかと、危ぶむくらいだ。
三浦半島は、房総、伊豆の両半島に比べると、可憐なくらいに小さい。
地図で見ると、私は盲腸に見えて仕方ない。
その盲腸が、身の程も知らず、東京湾の湾口を、塞ごうとしている。
塞ぎそこね、悔しがっている、幼児の姿に見えなくもない。
半島の狭いところは、ものの10キロにも、満たなかろう。
歩いても、横断出来るくらいだ。
車なら縦横に、走り回れたわけである。
京急久里浜駅に着いた。
ここまで横浜から30分ほど、品川からでも一時間あまりだ。
近いのである。
車がなくても、簡単に来られる。
迂闊にも、そのことに、気付かないでいた。
* * *
駅で、三人と合流した。
この際の、同志である。
気持を一つにし、本日の飲食に、臨もうとしている。
目指すKさんの家は、10分ほど歩いた、小高い山の上にあると聞いている。
折悪しく、雨が降っている。
傘を差し、語句さんと、並んで歩く。
五年前からの付き合いだ。
飲んだり、旅を共にしたり、時にその家に泊めてもらったりと、
ネットで始まった縁が、今では、親友の域に達している。
女性が二人居る。
二人とも美人だ。
しかし、二十年前に出会えば、もっと良かったことは、言うまでもない。
一人は、目の玉が大きい。
その目の玉を、私に向けて「師匠」と言う。
やめてくれと言うのだが、やめない。
弟子にした覚えはないのだが、押し掛け弟子ですからと言う。
迷惑だが、彼女には、良いところもある。
人の話をよく聞く。
真剣に聞く。
特に、文学の話をする時だ。
瞬きもせずに、その目を私に向ける。
NHKの朝ドラが、今回は「マッサン」をやっている。
その中に、異例のヒロインが登場する。
マッサンが、スコットランドから連れて来た、金髪の妻、エリーだ。
そのエリーが、人の話を聞く時に、同じような目をする。
おいおい、そんなに開きっ放しだと、目玉が落ちちまうぞと言いたくなる。
もう一人とは、初対面だ。
穏やかな笑みを浮かべ、端然と構えているところ、
幼稚園の園長先生みたいに見える。
それでいて、淡如かと思えば、そうでもない。
私の放つ冗談にも、当意即妙に答えが返る。
ただの昼寝主婦ではあるまい。
女優の黒木メイサに、お母さんが居るとしたら、
彼女のような女性ではあるまいか。
語句氏、エリー嬢、メイサママ、それに私の四人は、
雨の久比里坂を登って行く。
三浦半島に、平坦地は少ない
高くはないが、小山が多い。
これを丘陵と呼ぶことも出来る。
見上げる小山の上に、民家が見える。
「あたし見て来る」
エリー嬢が、傍らの石段を登り始めた。
彼女、ダンスをやっていたくらいで、フットワークが軽い。
しばらくして、上から声が聞こえた。
「ビンゴー」
どうやら、当たりらしい。
私達は、K家への石段を、ぞろぞろと登り始めた。
(続く)
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楽しい日々でした
ウィールマンさんも、アウトドア派ですね。
私は、小物釣り専門で、佐島マリーナの辺りから、
ボートで沖に漕ぎ出し、
キスを狙っていました。
釣った魚は、天ぷらに揚げるなどして、美味しく食べました。
楽しい思い出です。
四人は、これから山上の家に上がり、Kさん手作りの、ごちそうを食べることになります。
その模様は、明日にでも・・・
2014/11/07 09:32:13
パトラッシュさん
いいですね、、、
エリー嬢、メイサママ、語句さん、パトラッシュさんが集合して、これから一体何が起きるのでしょうか、、、
読んでいて、とても楽しくなります。
ウイールマンも昔日本にいた頃、三浦半島や伊豆半島などによく磯釣りに行きました。
とても懐かしい日本の海です。
2014/11/07 05:39:53
ロマン
我太郎さん、
考えることは、同じですね。
しかし、一千万は大きい。
単身赴任も辛い。
男のロマンは、おおむね夢見るだけで、終わるようです。
2014/11/02 13:15:33
よう似てま
前半の行は生業を覗けば、丸で我が事のようです
和歌山で漁師やりたくて、田舎暮らしの月刊誌で探して、組合員になるのに300万円だとか
今の金額なら1千万円くらいでした
それに棲み家、なにより一人で行けと、諦めました
2014/11/02 12:30:58
今回は残念でしたが
彩々さん、
余儀ないこととはいえ、いらっしゃれなかったことが、惜しまれます。
お会いして、楽しくなりこそすれ、失望することなど、まったくないお人でしたから。
機会があれば、また伺うこともあるでしょう。
その時は、是非どうぞ。
彩々さんの文だって、独自の境地を開き、何処に出しても通用する、立派なものですよ。
ああ、なるほどと・・・と、参考にさせてもらっています。
2014/11/02 07:56:05
次回は・・・
reiさん、
ミルフィーユとは、うまい(美味い)ことを言いますね。
物語を、ふくらまそうと思ううちに、こんな重層的な文になりました。
次回では、もっと膨らませます。
山上の家の主に、焦点が移りますので、同行の皆さんの影は、薄くなります。
エリー嬢もメイサママも、本当はもっと登場させたかったのですが・・・
2014/11/02 07:48:05
奥行き
ご一緒しなかったことに後悔しました。
さりげない情景描写…
一緒に知らない土地や人を旅したように
パトさんの「久里浜旅日記」を読ませて
いただきました。
Kさんが住む土地、Kさんというお方に
お会いしなかったことは私自身の損失
だったとも思えます。
そう思わせる程のパトさんのBlog文にある
流れ。
この奥深さに到達するまで、私は
まだまだなぁ。。。
人生の深みが足らないのは解っているのですが。
2014/11/02 06:20:48
さすがです
こんばんは。
メイサママではなく、昼寝主婦に近い私ですが、皆さんからの刺激で覚醒しつつ?あります(^_^.)
さすがに、何層にも折り重なったミルフィーユのごとく、色んなエピソードが重なり合っていきますね。
同じ情景を目にした者として、こんな書き方もあるのかと、大変勉強になります。
2014/11/01 22:34:25
老婆ではありません
正直、Kさんの溌剌さに、驚かされました。
人間は、戸籍の年齢では、推し量れないものだと、
改めて思いました。
その張りのあるお声が、今も脳裏にあります。
それらを中心に、次回は書きます。
四人組は、わき役になります。
2014/11/01 16:32:06
kより
皆さんお年寄りが珍しいから
古家の山の奥に老婆一人
歌になりそうだわ
持ち上げても何も出ないよ
この前みたいに適当で良ければ
何時でも来て下さい
私お喋りで驚いたでしょう
昔はそれほどでなかったのに
主人が無口でしたから
私が主人の代わりも喋った
結果がこれなのよ
2014/11/01 11:57:20
主役
吾喰楽さん、
楽しくて、あっと言う間の半日でした。
続きは来週になります。
主役が登場します。
Kさんお一人に絞り、書いてみようと思っています。
2014/11/01 10:47:42
魅力ある女性
まこさん、
お読み頂きまして、ありがとうございます。
年齢を感じさせない女性でした。
こんなことなら、もっと早くに、知遇を得ておけばよかったと・・・
> 年齢に関わらず、魅力ある人はいつまで経ってもお若いですね。
まこさんもきっと、そんな女性の一人でしょう。
2014/11/01 10:44:48
まぁ、そう仰らず
何という、淀みなく淡々と語られる中に詩情が溢れる文章でしょう。
これを読んだら、恥ずかしくて何も書けなくなってしまいます。
押しかけ弟子に!と控えめなエリーがなるのも無理からぬ事でしょう。
たとえ目玉が落ちようとも、その一言一句を聞き漏らすまいとしていると、瞬きを忘れます。
情景が浮かび、潮の香りが漂って来ました。
どんなに嫌がられても、押しかけ弟子はついて行く事でしょう。(笑)
2014/11/01 10:06:55
語句です
おはようございます。
楽しかったひと時が蘇って来ました。
本当に海の近くで食べる魚は、美味しいですね。
たとえ、その地で獲れた魚でなくてもです。
魚津へ単身赴任していた頃、イカを土産に買って帰ったことがあります。
ところが、魚津で食べたときの感激がないのです。
エリー嬢、メイサママ、素晴らしい命名です。
当事者だけに解る、意味合いもありますね。
Kさん宅で、我々がどう料理されるか、楽しみです。
2014/11/01 08:07:34
おはようございます
さすが師匠でいらっしゃいます。
人を引き付ける上手い文章ですね。
Kさん宅は私も訪問したことがあります。年齢を感じさせない方ですね。
若くて気さく、エリーさんのような目をする女性と同じで、数十年前に会ったら、ますます美人で魅力あったと思いますよ。
年齢に関わらず、魅力ある人はいつまで経ってもお若いですね。
2014/11/01 07:47:05