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パトラッシュが駆ける!

旅に出たいが 

2014年10月25日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

「おばんです」
電話に出たら、懐かしい声が響いた。
秋田の朝之助だ。
相変わらず、元気がいい。

「来るかと思ってた」
いきなり言う。
この時期「大人の休日フリー切符」が売り出され、
JR東日本管内の鉄道が、格安料金で、乗り放題になっている。

「行きたいのは山々だけど・・・」
「忙しいの?」
「いろいろあってね」
行けばそれなりに、負担をかける。
朝之助のことだ。
自宅に泊まれと言うだろう。
その至れり尽くせりが、分かっているだけに、かえって行きにくい。

「東京にも来てよ」
こっちも、言ってやる。
彼だって同じように「ジパング倶楽部」に入っていて、
その格安切符を利用出来る。
秋田から、東京に来る手もあったわけだ。

「十二月に、もう一度切符が売り出される。その時に、
東京さ行くかもしれない」
冬の秋田は、見所も少ない。
(秋に比べればの話だが)
冬こそ、北の人間が、南に行くべきだと、彼はそう言っている。
一理なくもない。

「待ってるよ」
私は、朝之助ほどのもてなしは、出来ないのだが、
それでもかつての、囲碁仲間を呼び集めるなどして、
盛大に歓迎宴を、開くつもりだ。
但し、先のことはわからない。
周辺の皆さんも、歳を取って来ている。
アリナミンは、死んでしまった。
重鎮もまた、病気から、立ち直れないでいる。
明日ありと思う心の仇桜・・・と言うではないか。
皆の人生が、その辺りに、さしかかっている。

 * * *

坐間先輩は、八ヶ岳山麓に山荘を持っている。
「泊まりに来ないか?」
毎年、秋の初めに、私に声をかける。
「僕ももう歳だから、会えるうちに、どんどん人に会っておこうと思って」
今年は珍しく、気弱なことを言った。

しかし、行ってみれば、元気いっぱいだ。
山荘の庭の、高さ30メートル、直径30センチもある落葉松を、
チェーンソーを使い、一人で切り倒したりしている。
来年には、八十歳を迎える。
運転免許を更新したいと、眼科医に通い、視力の維持にこれ努めていたりする。
その前向きの姿勢に、変わりはない。

多分“揺れ“であろう。
「もうそろそろ」と「まだまだ」が、彼の中で、去来しているのではあるまいか。
さながら「躁」と「鬱」が、交互するようにである。
わからないでもない。
私にだって時に、同じように揺れ動く。

私も、人に会うのは好きだ。
ましてや先輩は、四国の遍路旅で会った人である。
旅から三年が経ち、何時切れても、不思議のない縁であるのに、
今も続いている。
これを大事にしない手はない。
だからこそ、誘いがかかれば、出かけている。

 * * *

木曽の民宿の主、正右衛門から、メールが入った。
私のエッセイを読んで、面白かったと言ってくれている。
「御嶽山の噴火の、直接の被害はなかったのですが、
今後の風評被害が心配です」
とも書いてある。

そうであろう。
知らない人は、同じ「木曽」ということで、一括りにしかねない。
行ってやろうかな・・・
にわかに、その気になりつつある。

こちらは、民宿だから、泊まるについての、気兼ねはいらない。
あるとすれば、宿泊料金のことだ。
「おなじみさん料金というのがありまして」
女将さんは、よく分からないことを言い、
正規の料金の半分くらいしか、請求をしない。
その上に、大酒喰らった、その酒代も計上しない。
それで困ってしまう。

行けば喜んでくれる。
心からもてなしてくれる。
それが、よくわかる。
それだけに、少しためらうところがある。

ここは四年前、中山道の旅で泊まった宿だ。
その縁が、今に続いている。
正右衛門は、自分の田んぼで採れた、米を送ってくれることがある。
私が、金物店の店仕舞いに際し、売れ残った工具などを送った、
そのお返しであろう。

 * * *

旅に出たいと思っている。
暑からず寒からず、絶好の季節だ。
時間はある。
旅費もまあ、何とかなる。
それなのに、ためらっている。

私は、幸せ者だ。
京大阪に、友人が居る。
奈良にも居る。
金沢にも居る。
いずれ劣らぬ、観光地である。
見所に事欠かない。
それなのに、踏ん切りがつかないでいる。

結局、こう言うことかもしれない。
私の体内の、youngという物質が揮発し、蒸発し、やがて結晶と化し、
それは自制心と名を替え、堆積しつつある。
そんなような、ものかもしれない。

「何処か、行きましょうか?ツアーで」
傍らの人が言う。
「行きません」
敢然として答える。
ツアーとは、旅行であり、それは娯楽であり、快楽であり、
旅ではないと思っている。
旅は、ほんの少しでもいい、苦労が伴なわなければいけない。

私の中の若さは、大分稀薄になりはしたが、
肝心の根っこ部分だけは、腐っていない。
少しだけ、意を強くしている。
「満を持している」
そう思うことにした。



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旅へ旅へと

パトラッシュさん

彩々さん、
先日も、大阪、神戸を巡っていらしたではないですか。
きっと、心に残る旅だったことでしょう。
どしどしお出かけ下さい。

2014/11/02 08:25:06

「旅」に憧れます

彩々さん

毎日が旅と思えば旅。
それでもたまに心に残る旅を求めて
人と会う。
これも旅だと思っています。

よく知らない人と少しずつ交流を
重ねて行くことも、知らない土地に
出掛け、見聞きすることも旅そのもの
だと思う。
そんな、今日この頃を過ごしてます。

2014/11/02 05:54:40

苦労もまたよし

パトラッシュさん

プラチナさん、
旅に苦労は付き物。
それが多いと、余計に思い出深い旅になると思います。
どうぞ、たくさん、お楽しみ下さい。

2014/10/27 07:25:30

車での旅

プラチナさん

これまで、旅の意味合いに拘った事は有りませんでしたが、云われてみれば、なるほど合点です。
当方、関東及び近県の山や名所などへ出向くのに、全て車移動なので、事前の予定・計画通り行かない事も多く、その対応に苦労したり反省したり、後に好い想い出と成っています。

2014/10/26 23:26:44

どしどし・・・

パトラッシュさん

MOMOさん、
おはようございます。
よく出かけておられますね。
諏訪、乗鞍、上高地、それぞれ魅力のある観光地です。
美景を堪能されたことと思います。

私は今のところ、一人旅が主ですが、足腰が衰えたら、ツアーのお世話になるかもしれません。
費用の点でも、ツアーの方が効率的ですから。

2014/10/26 07:09:00

今年はバスツアー3回

MOMOさん

某旅行会社主催のバスツアーに、今年は3回行きました。
最初が「奥諏訪のザゼンソウ見学」。2度目が1泊で「乗鞍高原滝巡りと乗鞍岳登山」。3度目が「上高地フリー4時間」。

自分にとっては景色の楽しみは+α、高山植物やまだ見ていなかった草花の撮影が目的でした。上高地は、雨で残念でしたが、それでも多くの収穫はありました。

一人での遠出や大きな山の登山は、腰に不安があってできなくなっていますので、ツアー会社のお世話になっています。

2014/10/26 01:19:42

三度楽しい

パトラッシュさん

喜美さん、
正にその通りです。
行く前もいいですね。浮き浮きと、気分が高まります。
地図を見ているだけで、思いが広がりますから。

喜美さん、お嬢さんに頼んで、どしどし連れて行ったもらうといいです。

2014/10/25 17:59:47

旅行

喜美さん

私は行く前に半分くらい楽しみます
本買ったり地図見たり バックに入れたり出したり 行っている間は
それなりに楽しく(ツアーも皆さんとご一緒で此れもよし)戻って
又思いだしたり反省したりで
三回楽しみです

2014/10/25 13:54:07

ツアーにも良いところが・・・

パトラッシュさん

reiさん、
「ツアーは旅じゃない」というのは、私の個人的な思いです。
この世はいろいろです。
ツアーでしか、行けない人も居ますから、あまり否定してしまっても、いけませんね。
でも、慣れて来ると、予定を立てない旅というのは、とても楽しいのです。
一度、お試しになってみませんか?・・・

2014/10/25 13:18:57

人生は修行です

パトラッシュさん

SOYOKAZEさん、
命短し、旅せよ乙女・・・ですよ。
どんどん、旅に出て下さい。
人との縁も、大切にしましょう。
と言わなくても、SOYOKAZEさんなら、とっくに実践しているでしょうけれど。

旅に出て、その旅行記を書いてみるのも、文章修業に、よいかもしれません。

2014/10/25 13:13:52

腰が重くなりました

パトラッシュさん

風香さん、
旅から帰って、旅路を回想する。
これがまた、楽しいのです。
「二度美味しい」のです。

「何時でも旅に出られる」
と思っていたら、
「何時も出られない」
に陥っています。

2014/10/25 13:09:11

味わい深いです

Reiさん

師匠。

とてもステキな文章ですね・・・私に無理難題?を課されても納得。

ツアーは旅ではない・・・耳が痛いです。
連れて行ってもらえば楽、と思いますが、記憶には残りませんね。
やはり苦労しないとダメですね、何事も!

2014/10/25 12:01:30

人と旅

さん

私もmixiサイトを媒体として日本の各地に友が居て、四国、中国地方、沖縄と訪ね、あちらからも、この東京の端のまちに来て頂きました。
そのご縁は今も健在です。

人とのご縁ほどありがたいものはないですね。
旅してお逢いして、心の深い所に思い出が残りました。

そして、旅・・
私はツアーのようなバスに乗ってしまえばお手軽に最少時間で主な観光地に行ける。
ただ、ついて行けばよいというのは苦手です。

自分で計画を立て、土地の人々と触れ合い、乗り遅れて失敗したりしながらも、ただ見て来たでない、心に残る旅がしたいです。
気まぐれに変更可でないと駄目でもあります。
このエッセイを読んでいたら、私も旅に出たくなりました。

2014/10/25 11:16:19

心のたび

さん

思い起すことが、旅路の逆コースを歩いているのかなぁと。
思い切って一歩を踏み出すことって勇気いる場合もあるんですよね。

2014/10/25 11:07:44

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