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パトラッシュが駆ける!

入門しま専科 

2014年03月15日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

「いいですねえ、囲碁サロンは。小学生のお弟子さんが、たくさん来て」
「私の時間がなくなり、困っております」
「次の世代を育てるのは、大事なことです」
「短歌の方は、いかがですか?」
「若い人が、なかなか、入って来ません。このままでは、先細りです」

Yさんと会うと、決まってこんな話になる。
ベテラン歌人であり、女性ながら、ある短歌結社の、
運営をしておられる。
本職は、不動産業だ。
そこで稼いだお金を、かなり投入しているのでは、あるまいか。
趣味が高じると、頭の痛いことも起きる。
親分にならず、その他大勢で居るうちが、よかったということもある。

彼女の店のガラスには、不動産賃貸の広告と並び、
「短歌 添削指導致します」の張り紙がある。
知らない人は、不動産屋が何で?と思うだろう。
それでも、その違和感が、かえって、道行く人の目に、留まるのかもしれない。
「ええ、何人か、入ってくれました」
と言うところを見ると、そこそこ効果があるようだ。

しかし、さすがに、子供は居ない。
囲碁の方も、高齢化が著しいが、しかし一方で、小中学生の新規参入もある。
これが、平均年齢を押し下げているはずだ。
先細りが懸念される、他の伝統芸能や遊戯の中では、珍しいことだ。

「先日、若い男性が、入ってくれましたのよ」
「へえ・・・」
「若いと言っても、四十代ですけどね」
「サラリーマンですか?」
「それは知りませんが、平日の昼に来るところを見ると、
違うでしょうね」
「作品は?」
「二首、作って来ました。もちろん初心者ですから、
それなりの作ですけど」
「やる気がありそうですね」

「それが、よく分からない人で。合評会に来たのはいいのですが、
ペンもメモ用紙も、持ってなくて」
「おやおや」
「時たま、私の店に来て、話し込んで行きます」
「作品を、添削してくれと?」
「じゃなくて、四方山話なんですけど。二、三十分、話して行きます」

「仕事の邪魔になりませんか?」
「仕方ありません」
「金の卵だから?」
「友達が、この町に百人ほど居るって」
「えっ?」
「ことによったら、誘ってみようかなって」
「・・・・・」

どうもおかしい。
少し前に、私のところへも、男が現れ、同じことを言っていた。

「痩せぎすで、眼鏡をかけてません?」
「ええ」
「四丁目に住んで居るとか?」
「はい、そう言ってました」
「独身ですよね?」
「そうらしいです」

間違いなく、同一人物だ。
私のところでは、こう言っていた。
「初めてなんですが、碁を教えて頂けるんですか」
もちろん、否やはない。

小学生に教えるように、噛んで含めて、ルールを教え、その後、
小さな盤での、実戦指導を行った。
その間にも、彼は、よく喋った。
「なーるほど、そう言うことなんですね、碁っていうのは」
しきりに頷くのだが、では、理解したのかと言えば、そうでもない。
さっき教えたところを、またも間違えるのは、
気が入っていない証拠だ。

「お仕事は?」
「今はやってません。調子を悪くしましてね、会社は辞めました。
いや、身体は丈夫なんですが、ノイローゼになりましてね。
いや、今は病院には行ってません」
私が一言発すると、それが十にもなって、返って来る。

「また来ます。よろしくお願いします」
それで帰って行ったのだが、百人氏が、再び現れることはなかった。
実を言えば、時たま、こう言う手合いが現れるのだ。
好奇心旺盛な者が、ちょっと体験してみたくなった・・・
つまり「ひやかし」であろうと、私は受け止めている。

百人氏め、碁はさっさと諦めたが、短歌は続いているようだ。
相手が女性だから・・・かもしれない。
私の場合、少し厳しい。
「あーたねえ、少し喋り過ぎですよ。教わっている時は、
もっとこちらの話を、よく聞きなさい」
はっきり言ってやった。
こわもての先生と、思われたかも知れない。

問題は、Yさんに、私の経験を、何処まで伝えるかだ。
彼は、「人恋しさ」からではないだろうか。
自分を受け入れてくれそうなものなら、
何でもよかったのでは、あるまいか。
それがたまたま、囲碁であり、短歌であったわけだ。
この分で行くと、彼が入門を志したものは、他にまだ、あるかもしれない。

あの軽々しさでは、短歌は先ず、無理だろう。
しかし、それを言っては「おしめえ」であろう。
Yさんも、容易に諦めないであろう。
何しろ、金の卵と思っている。

私は、余計なことを言わず、黙って見守ることにした。
この世では、予想外のことが、起きることもある。



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思案橋・・・

パトラッシュさん

まっこさん、
何処にも、似たような人が居るものですね。
旦那さん、優しいですね。
きっと、良いことがあるでしょう。

Yさんに、それとなく、伝えた方がいいかなと、
思案もしております。

2014/03/17 08:36:37

思うに

さん

人恋しさではないでしょうか?
夫の知人にもよく似た方がおります。
大した用件もないのに電話で1時間はざら!
こちらから電話を切らない限り2時間でも話し続けるのです。
「60過ぎの独り身なので人恋しいんだろう。誰かと繋がっていたいのさ」と夫はボランティア精神?
私はそこまで優しくない。
Yさん 気落ちすることにならなきゃいいけど…

2014/03/17 06:53:33

縁なし

パトラッシュさん

風香さん、
ほんとに、不思議な男です。
まあ、事件さえ起こさなければ、ふらふらさまよっていても、構いませんけどね・・・
私は、もう、縁が切れたつもり。
よかったです。

2014/03/15 18:07:41

幸い

パトラッシュさん

SOYOJAZEさん、
理解に苦しむ男です。
生活保護を受け、それで暮らしているという説もあります。
私は、関わりたくないから、来てくれなくて、ちょうどよかったです。

2014/03/15 18:04:04

あーた

パトラッシュさん

秋桜さん、
そうですね、森繁節ですね。
それから、落語家の三遊亭円生師匠も、よくこんな口ぶりでした。

百人氏のその後の動向は、まだわかりません。
いずれ、はっきりするでしょう。

2014/03/15 18:01:47

目線が違って

さん

ん・・不思議なひとですね。
春の陽気に誘われて な〜となくでしょうか。
町内探検のつもりでしょうか。

様子ながめですね。

2014/03/15 11:18:10

はたして?

さん

その方、人恋しいだけなら人畜無害ですが、何かよからぬ魂胆がある詐欺師だったら?とふと心配してしまいました。

パトラッシュさんは鋭い方だし、はっきりもの申す方ですから「こりゃ拙い」と退散、人がよくおっとりタイプの年配のサロンに潜り込んで一儲けなんて輩でないと良いのですが・・・

2014/03/15 09:59:39

金の卵か、人恋しさか。

秋桜さん

>「あーたねえ、少し喋り過ぎです     よ。・・」


ふふふ、亡き森繁久弥を想像してしまいました。
ちゃんと言って正解ですよ〜

それにしても彼は人恋しいのでしょうか。
何だか世相を反映していますね。


  

2014/03/15 07:58:40

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