小噺「天地神明」

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2014年03月10日ナビトモブログ記事
テーマ：テーマ無し

「天地神明たあ、そんなにえれえもんですか？」
「そりゃお前、すべての神々だ。そこらのお稲荷さんとは、訳が違う」
「それに誓うたあ、よほどの自信があるんだろうね」
「そうじゃない。単なる修辞だ。『誓う』にかかる、
枕詞みたいなもんだ」

「息巻いてましたぜ。名誉棄損で、訴えるって」
「仲間割れってやつだ。悪事が露見した際に、犯行グループ内に、
よく起きる現象だ」
「どっちもどっち・・・ですね」
「目糞が、鼻糞を指差し『あいつの方が汚いって』罵ってるようなもんだ」

「奥さんまでが、自分の母親を訴えるって」
「とんだ猿芝居だ。その滑稽さに、気付かないのかね」
「亭主を庇って、そう言ってるんでしょ」
「そりゃ、情において、分からないでもないが、しかし、
不可解な夫婦だ」

「ですよね。一緒に暮らしていて、亭主の耳の状態に、気付かねえなんて」
「耳より、音楽のことだ。亭主に、その才能がないことくらい、
わかりそうなものだ。
うちのなんか、わしのことを、何でも知ってる。
隠そうとすると、かえって気付く」
「わかった。ご隠居さんが隠すのは、これでしょ。えへへ」

「女の嗅覚てえやつは、男よりうんと鋭い」
「へへへ、ばれちまって、絞られましたか？」
「もう一つ、女には武器がある」
「わかった。離婚でしょ。最近の女は、すぐにそれを振りかざすって」

「そうだ。二言目には、これで亭主を脅す」
「あんな婆さんでも、出て行かれたら、ご隠居さん、
生きて行けねえもんね」
「これこれ、あんな婆さんとは、なんだ。生きては行けるが、
世間体もあるし、面倒だ。それで大概のことは、謝っちまう」

「だらしねーね、それでも男かね」
「奴のところも、大方、かみさんが牛耳ってたはずだ」
「えへへ、そう思いたいんでしょ、恐妻家のご隠居さんとしては」
「弱みを握られ、亭主のやつ、逆らえなかったんだろうよ」

「案外、いい女房かもしれません。事件の発覚が、
世界に広がる前で、よかったわねと、亭主を慰めたそうですから」
「より大きな悪事を引き合いに、犯した罪の、相対的矮小化を図っている」
「何です？矮小化って」
「小さく見せようってこと」

「あっしはなんか、何でも大きく見せますがね」
「お前だって、ちょくちょくやるだろ、矮小化。
タバコの煙より、車の排ガスの方が、ずっと悪いんだって、
この前、警官の前で、逆切れしてただろ」
「やだなあ、ご隠居さん、見てたんですかい」

「後味悪い事件だった」
「こんだけ、世間を騒がせちゃー、この先、世渡りもてえへんでしょう、やつら」
「正業に就いて、地道にやるよりあるまい」
「出来そうな仕事が、ありますかね？」

「左官屋なんか、いいだろう」
「そりゃまた、どうして？」
「塗り固めるのは、得意のようだ」
「あっしは、飯屋がいいと思う」
「そりゃまた、どうして？」
「一杯食わせるのは、お手の物です」

2014/03/10 09:18:39

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すみません

実にお見事！

ペンキ屋なんかも・・・

左官屋も飯屋も！

おだてられると、木に上ります

ありがとうございます

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座布団１０枚をアマゾンに手配致しました。

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