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パトラッシュが駆ける!

料理の腕は 

2012年04月06日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し


茹でるか茹でないか。
茹でるのは、アクを取るためだ。
となれば、私は茹でない。
アクも香りも強い方がいい。

ざくざくと切る。
考えもなしに切る。
不揃いの方が、むしろいい。
これが私向きだ。

だいたいが、私の料理の腕たるや、からきしなのである。
庖丁に関して言えば、それを売ること、研ぐことなら長年の経験があるのだが、
使う方はだめだ。
大根の桂剥きなんていうのが出来ない。
賽の目や短冊すらも、上手く刻めない。
私がやると、サイズも形も、千々に乱れてしまう。

そこへ行くと、鯵のたたきはいい。
あれは三枚におろして小骨を取り、皮を引ん剥く。
あとは刻みネギを入れ、出刃をとんとんと振り下ろすだけだ。
繊細さに欠ける私には、うってつけの料理である。

さて今回は、フキノトウである。
これを北関東に住む友人が、送って下さった。
ありがたいことだ。
毎年春になると、雪の残る野山に分け入り、フキノトウを採取し、
それをお裾分けと称して、送って下さる。
女性である。
となると、私は何となく持てたような気分になり、
相手が男であるより、三割方は余計に嬉しい。

野山に自生するフキノトウは、八百屋の店頭のそれとは、明らかに違う。
雪の下で、じっと春を待つ、その強さが、アクとなり、苦味となり、
蕾の中に凝縮するのだと、私はそう理解している。
だから貴重である。

たくさんあるけれど、誰にも分けてやらない。
フキ味噌を作るようになってから、私はケチになった。
それが余りにも美味であったからだ。
天ぷらもいい。
味噌汁に入れてもいい。
もういい事尽くめなのである。

調理はなるべく、妻の出かけた隙にやる。
居れば何かと口出しし、うるさいのである。
梅ジャムを作る時もそうだ。
夫婦別厨(べっちゅう)と称し、私はそれを、店のミニキッチンを使ってやるくらいだ。

なに、どちらも簡単なのである。
私はもう、レシピを見るまでもない。
調味料だって、一々計量しない。
このくらいでいいだろう・・・
材料と比べながらの、目分量である。

フライパンにごま油を敷き、刻んだフキノトウを入れる。
ざっと炒めたところに、用意の味醂砂糖を入れ、味噌を加える。
だし汁を入れる。
一旦緩んだ味噌が、再び元の固さに戻り、それと共に、照りが出て来る。
火を止めて出来上がり。
実にもう、簡単だ。

「まあまあね」
帰って来た妻が、一舐めして言う。
その顔に、一抹の憂いが浮かぶように見える。

梅ジャムの時もそうなのだが、きっと内心は、忌々しいのではないだろうか。
ぽっと出の亭主が、手際も鮮やかに、キッチンの主である自分より、
上手な料理を作る。
これが耐え難いとは言わないまでも、内心穏やかでないのであろう。

 * * *

「おや、もうこれだけかい?」
「そうですよ」
「・・・・・」
「だって、○○さんに上げたでしょ。それに△△さん、××さんにも。
娘二人だって、持って行きましたよ」
「・・・・・」

私の悪いくせだ。
自信作が出来ると、すぐに人に分配を始める。
そうしては、自分の口に入る分が、乏しくなっている。

「まあいいさ。塩分の取り過ぎは、身体によくない」
「そうですね」
「私はダイエット中の身だ」
「そうです」
「上げた先で、誰が太ろうと、血圧が上がろうと、知ったこっちゃない」
「はい」
毎年こんなことを、繰り返している。
私の人間性の、何処かに問題があることは、自分でもわかっている。

 * * *

梅、鯵、そしてフキノトウ・・・
下さる方が居るから、私はそれを調理する気になっている。
材料を買ってでも、やろうという気にはなっていない。
これが、幸か不幸かである。

私は実は、凝り性の一面も持っている。
庖丁だって、私は長年金物屋をやり、扱い慣れている。
本気でやれば、そこそこ練達し、桂剥きなんか、くるくるとやってのける自信がある。
やらないだけだ。

やったら私のことだ。
きっと、のめり込むに違いない。
その時、一家に主婦が二人居ては、厄介なことになる。
だから料理とは、一線を画している。

年に一度、フキ味噌を作る。
初夏の頃には、梅ジャムを作る。
釣り好きの友人が、釣って来た鯵を置いて行く。
これで、たたきを作る。
この程度の幸せがいい。

これ以上、レパートリーは増やすまいと思っている。
しかし、下さるなら話は別だ。
鯛でもヒラメでも、どんと来い、やってやろうじゃないかと思っている。



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まさに至福で

パトラッシュさん

夏の葉さん、その通りです。
しみじみと春を感じ、しみじみとうまいです。
散歩の途中で採れるなんて、いいですね。
ほう、佃煮ですか・・・
それも美味そうですね。

ところで、ハンドルネーム、この時期だけ、「春の葉」に変えてみますか・・・
いや、冗談です。

ご来訪を頂き、ありがとうございました。

2012/04/06 13:16:36

さすが

パトラッシュさん

吾喰楽さんのところは、お互いに
「分を守って」いたのですね。
私のところは、互いに競争心が熾烈、相手の上を行ってやろうと思っているもので・・・
こまったもんです。はあ・・・

2012/04/06 13:10:18

春の至福

夏の葉さん

苦味・えぐみ、春の味覚ですね〜。大好きです。
フキ味噌、散歩の途中で摘んできたフキで作りました。
ちょんびり、ですけど。
今は葉っぱのほうを千切ってきて、佃煮にしています。
店で買うのよりアクが強いですけど、これが春らしくていい。
春の至福ですね。

2012/04/06 11:11:22

主婦と主夫

吾喰楽さん

わが家では、夫婦で台所に入ることもありました。
トラブルは、無かったです。
理由は、簡単。
吾喰楽が、アシスタントに徹したのです。
お互い、完全に任せて手伝わないこともありました。
そのときは、作らなかった方が、片付けを担当しました。

2012/04/06 11:08:26

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