読書日記

『夢も定かに』 読書日記359 

2024年04月16日 ナビトモブログ記事
テーマ:読書日記

澤田瞳子『夢も定かに』中公文庫

書店で見つけて購入したもの。私は書店で購入した場合、基本的には書店のブックカバーをつけてもらう。なんと言うか、裸のまま持ち歩く気がしないこともあるが、実は貧乏人根性が理由である(笑)。で、この読書日記を書こうとしてamazonのページを見て、えっ、こんな表紙絵であったのかと驚いた。

さて、amazonの内容案内では
翔べ、平城京のワーキングガール!

聖武天皇の御世、後宮で働くべく上京してきたおっとり者の若子(わかこ)。
同室になった姐御肌の笠女(かさめ)、魔性の春世(はるよ)とともに、権謀渦巻く平城京にいざ漕ぎ出してみると――。 恋と友情と政争に彩られた〈宮廷青春小説〉、華やかに開幕!

という短いもの。 Google Booksの方が内容が少しだけ具体的で
郷里を離れ、天皇の身の回りの世話をする采女としてやってきた若子。同室にはしっかり者の笠女、数々の男性と浮き名を流す春世がいた。器量は十人並み、何事につけても不器用、優柔不断な若子も、次第に宮廷内で生き抜く術を身につけていく。だが藤原一族の勢力が伸張しつつある時代にあって、若子も政争に巻き込まれ...。

こちらの方が興味を惹くかもしれない。よく読めば大差の無い案内だが。

高校の授業で習う日本史での奈良時代は短い期間(710〜794)に、長屋王の変(729)、藤原広嗣の乱(740)、橘奈良麻呂の変(757)、恵美押勝の乱(764)など政変が相次いだという印象がある。大宝律令(701)、養老律令(718)と律令制がひかれ、公地公民制による班田収受(均田制)が始まるが間もなく、百万町歩の開墾計画が打ち出され、それを推進するために三世一身法(723)、墾田永年私財法(743)と早くも均田制崩壊への芽も生まれるなど、割とみっしりと詰まった時代である。

こうした時代背景のもとに、宮中女官の生態(?)を描いたのが本書で、主人公の若子やその朋輩の笠子、春世は采女(後宮に勤務するために上京してきた地方豪族の娘たち。下級女官)で、対立関係にある意美奈(イミナ)や志斐弖(シビテ)などは氏女(采女とともに後宮に勤務する、畿内豪族の娘たち)とその上位職がおり、膳司(カシワデノツカサ:天皇の食事を手配する役所)、書司(フミノツカサ:書籍や文房具類を管理する)、縫司(ヌイノツカサ:衣服の採訪を司る役所)などに分かれて仕事に励む。

同室で暮らすことになった3人は3者3様ながら、宮中生活を送るのであるが、巻末の遠藤慶太(皇學館大学准教授)氏の解説によると実は3人共に実在したモデルがいるらしく、『続 日本紀』の中にそれらしい女性が見いだされるという。これには驚いた。いやいや、きっちり史料を調べる作者であるからそれは当然なのかも知れないが、驚くべきはそういう女性たちが断片的にせよ「国史」に残っていることだと思う。
(2024年3月23日読了)



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