読書日記

『カラ売り屋』 <旧>読書日記1579 

2024年04月15日 ナビトモブログ記事
テーマ:<旧>読書日記


黒木亮『カラ売り屋』講談社(図書館)

はじめて読む作家である。週刊誌の書評欄で著者の最新作『カラ売り屋vs仮想通貨』があってそれを読んでみようかと図書館で検索したら予約者が多数。しかし、カラ売り屋という言葉を含む本は3冊あり、古い本には予約が無くとりあえず一番古いものを予約した。

本篇は「カラ売り屋」「村おこし屋」「エマージング屋」「再生屋」の4つの短篇で構成されていたとは借りるまで知らなかった。他の「カラ売り屋」は長篇の様なので、このモチーフが発展したのかもしれない。

「カラ売り屋」…コーポレートガバナンスに問題のある業績の傾いていた建設会社をターゲットにカラ売りで利益をあげようとするファンドの話。
「村おこし屋」…村おこしを舞台に公的資金を食い物にする話。地方に対するバラマキの問題についてよくわかる。
「エマージング屋」
新興国関連の取引に携わる銀行の話。同時に日本の銀行の人事制度の問題点も垣間見れる。
「再生屋」…経営の傾いた温泉旅館の再建を図る話。

なお、カラ売りとは株式投資の手法の一つで自分では持っていない株を(借りて)売ることによって値崩れを起こし、安くなったところで買い戻してその差額を利益と使用というやりかたである。また、エマージング(emerging)とは直訳すると「新出現の」という意味で、 一般的には、中南米、東南アジア、中東、東欧などの市場を指す。 経済が急成長することにより高いリターンが期待できる半面、通貨価値の暴落や急激なインフレなど、先進国市場と比較すると投資リスクが相対的に高いこともこの市場の特徴である。

というわけでこの本は経済小説に分類される。どうやら著者は重厚な経済小説で有名らしく、本書はそれらの先駆的著書に比べると少しあっさりし過ぎているらしい。

私としては、なんと言うか、経済という大きな森の中にある細い道を説明するような感じを受け、用語の説明や背景などが書かれているだけに感じて、主人公などに入り込みにくかった。長篇となるとそのあたりも書き込まれているのかも知れないと思うけれど、次作を読むのは数ヶ月先になるだろうという予感がする。
(2021年10月5日読了)



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