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読書日記
『キリギリスの年金』 <旧>読書日記1578
2024年04月12日
テーマ:<旧>読書日記
明石順平『キリギリスの年金』朝日新書(図書館)
表紙裏の内容紹介に寄れば、本書の内容は以下の様になる。
金融庁が公表した「老後2000万円報告書」、年金の仕組みや歴史的背景、将来年金の見通しまで徹底検証。少子高齢化への無策、雪だるま式の借金、円安インフレの危機…そして、コロナショックによる公的年金の運用赤字!未来の国民からお金を奪い続ける「問題先送り国家」の末路とは。アベノミクスやMMTに繰り返し警鐘を鳴らす著者が、誰も直視しようとしない不都合な現実を正面から斬る。
第1章 老後2000万円問題(世間を騒がせた報告書;高齢夫婦無職世帯の割合 ほか)
第2章 公的年金の歴史と仕組み(年金は保険の一種;戦前の公的年金制度の歩み ほか)
第3章 絶対に実現しない年金財政の将来見通し(2019年年金財政検証;負担の押し付け合いの果てに ほか)
第4章 アベノミクスと年金(アベノミクスとは;マネーストックの増加ペースは変わらず ほか)
第5章 MMTと年金(「通貨安インフレ」を無視した理論;税は財源ではない? ほか)
日本の問題は結局「負担はしたくない。でもオカネは欲しい」というキリギリス的思考が日本を破綻に追い込む、というのが著者の主張であり、そうした我が国の現状報告でもある。そして、その解決策は著者には無い。あとがき、それも終わりの3行半で著者はこう書いている。
年金で老後を過ごすことが不可能になってしまったのです(*)。受け入れがたい現実ですが、受け入れるしかありません。せめて法律を変え、運用を変え、仕事に殺されて人生が終わるような状況にしないことが、最悪の状況の中で取り得る最善の手段だと私は思います。
正直に言えば、内容に目新しい所は無い。数多の論者が言っていたことを改めて言っているだけ、とも言える。著者が第2章で一応の年金制度の変遷を書いているが、ある意味でもっとも重要なことは書かれていない。
今で言う1階部分の国民年金制度が始まったのは昭和34年(1959年)で、発足当時の月額保険料は35歳未満が100円、35歳以上が150円で、加入期間25年の老齢年金の給付額は、年24,000円であった。また、昭和35年における平均寿命は男が65.49歳、女が70.08歳であった。
ちなみに令和3年度(令和3年4月〜令和4年3月まで)の保険料はは月額16,610円、40年間加入しての老齢年金は満額で年78万円余りである。保険料は166倍、年金額は32.5倍で、さらに消費者物価指数は平成27年(2015年)を100としてみると、昭和34年は17.6、令和2年は102.3だからおおむね物価は5.8倍余りになっている(つまり昭和34年の24000円は令和2年だとおよそ14万円に当たる)。
何が言いたいかと言うと、今の年金額では充分で無いというならそれは発足当時から年金額は雀の涙ほどの額でしかなく、不十分であったということである。著者は1984年生まれであるからまだ40歳にもなっていない。生まれた時には既に国民年金制度が始まっていたために終わりの3行(*)に現れているような過大な期待あるいは認識がどこかにあったのではなかろうか。
(2021年10月3日読了)
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