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読書日記
『老人ホテル』 読書日記350
2024年03月26日
テーマ:読書日記
原田ひ香『老人ホテル』光文社(図書館)
主人公の名は「天使」と書いて「えんじぇる」と読む。天使は女性でありその境遇は以下の内容案内に集約される。
埼玉県の大家族で育った日村天使は、生活保護を受け自堕落な生活を送ってきた。大家族ファミリーとしてテレビにも出ていたが、16歳で家を出て、大宮のキャバクラ「マヤカシ」に勤める。そこでビルのオーナー綾小路光子と知り合った。数年後、訳あり老人が長逗留する古びたビジネスホテルにひっそりと暮らす光子と再会する。 ...
訳あり老人たちが長逗留するビジネスホテルにひっそりと暮らす光子の指南で、極貧人生から抜け出そうと、生きるノウハウを学ぶことになるが……。秘密を抱えた二人の「投資版マイフェアレディ」!
大家族というのは彼女の家族は父母の他に長女・大天使(みかえる)以下、長男・堕天使(るしふああ)、次男・羅天使(らふぁえる)、次女・我天使(がぶりえる)、三男・亜太夢(あだむ)、三女・衣歩(いぶ)に続く四女で末っ子の天使と合計九人家族だった。「生活保護」を受けている天使の一家は誰も働いたことが無い、というのが話のポイントの1つ。そこだけ読むと生活保護の在り方というかその悪用の問題点をいやでも知る。
ただ、残念なことに「投資版マイフェアレディ」というのは宣伝の盛りすぎ。なにしろ、前半と言うかほぼ3/4は天使の生い立ちと光子との信頼関係?ができて繋がるまでのいきさつであるし、天使の狙いは何年か前に光子が「金持ちになれる、誰でもできる、その方法を知っている」とはるか昔に天使たちに言ったことを頼りとして、それを教えて貰おうというのが目的である。
で、終わり近くに天使の願いはついに光子に聞き入れられ、そのための準備のスタートが切られいよいよこれからというところで光子は死ぬ、という終わり方だ。つまり、一歩を踏み出して二歩目にかかるかという所での終わりで「マイフェアレディ」ならばヒギンズ教授がイライザを見いだして、博士の家に住み込みはじめたばかりの時ぐらいで終わるのと同じだ。
著者は「マイフェアレディ」の様な成功譚を書くつもりはなかったろうし、光子の教えることは実際に行うには相当苦労する苦難の道である。義務教育というものは地味に大切だと思う。
(2024年3月4日読了)
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