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『校閲ガール』 <旧>読書日記1559 

2024年02月28日 ナビトモブログ記事
テーマ:<旧>読書日記


宮木あや子『校閲ガール』KADOKAWA(図書館)

図書館へ予約した本を受け取りに行ってついでに書棚から借りたもの。読みやすく、勢いのある文体であっという間に読了。本の概要を知る為にグーグル先生にお伺いを立てたら7〜8割がTVドラマとしての『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』(石原さとみ主演)の記事で、ああTVドラマ化されていたんだ、と知った。

まず校閲とはなんぞや。本文の5話にそれぞれ国語辞書(掲載順に『大辞泉』『新潮現代国語辞典』『明鏡国語辞典』『大辞林』『広辞苑』)による項目が出ている。ま、大同小異なので最初の『大辞泉』を写せば「文書や原稿などの誤りや不備な点を調べ、検討し、訂正したり校正したりすること」となるが、本書中ではさらに「漢数字」か「算用数字」など字句の統一、「です・ます調」と「である調」など表記の揺れの統一も挙げられている。

校正が基本的に元の原稿と照らし合わせて、作成中のコンテンツの誤字脱字、文字の重複を発見、修正することに対して校閲はやや広く上にあげた表記の揺れや事実関係の誤り、差別表現や深い表現の有無、内容に矛盾が起きていないかの確認まで幅広くチェックする。

地味ではあるが出版物の質を上げるためには必要な工程である。が、出版社でも「校閲部」が無い所もあるとはこの本で知ったことの1つ。ネットメディアでは校正・校閲部門を持たない会社が多くまた速報性を重視するためか誤字脱字そして誤変換が多いと私は思っている。

本書の主人公は河野悦子。幼い時からファッションに興味をもってファッション雑誌を読みまくり、景凡社(架空の出版社だが平凡社=現マガジンハウスと推定される)発行の『Lassy』(架空の雑誌)の雑誌編集に関わりたいという一心でで就職試験を受け、気合いと根性だけ(ファッション誌についての驚異的な記憶力を買われたらしい)で正社員として採用された(*)

だが、河野悦子が配属されたのは希望とまったく違う校閲部。部長からは真面目に仕事をしていれば希望の部署への転属もあり得ると言われて、真面目かつ完璧に仕事をしている。文学にまったく興味がなかった悦子はボキャブラリイに偏りがあり、ファッション雑誌に出ている言葉には強いが、ごく普通の言葉も知らないことが多く、校閲には何冊もの辞書や参考書を使う(と言っても校閲者には参考書籍を使うのは当たり前である)。

そして、ファッションについて意識の高い悦子は安い家賃の住居に住み、食費も削って、洋服などを買いあさっていて、職場にもパリッとしたファッションで出勤するのであるが、それは校閲部では浮いていて秘かに「オシャカワ=オシャレしても無駄で可哀相」と呼ばれている。

そんな悦子の活躍が「校閲ガール!?」「校閲ガールと編集ウーマン」「校閲ガールとファッショニスタとアフロ」「校閲ガールとワイシャツとうなぎ」「校閲ガール〜ロシアと湯葉とその他のうなぎ」の5話とエピローグ「愛して校閲ガール」で語られる。

正直に言えば、本文中に出てくるファッション用語とブランド名はまったくチンプンカンプンであり、ただ目を通り過ぎるだけであったが、本当に面白く読めた。また校閲前の文章を作るのは大変だったろうな(もちろん、本書も校閲されている)と思った。

(*)ちなみに出版社への就職は非常に難関で世間で知られている出版社でも採用数2けたは珍しくたいていは1〜数人。小さな出版社では定期採用すら無い。本書中でも悦子の時の景凡社の同期採用は6人となっている。
(2021年8月26日読了)



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